労災保険は、被保険者の遺族に対して補償があります。補償は、遺族補償年金・遺族年金、遺族補償一時金・遺族一時金です。その内容について解説します。

 

2015/06/18 10:41:18

労災の遺族補償給付等について

労働者が業務災害により死亡した場合に遺族に支給されるのが遺族補償給付です。また、労働者が通勤災害により死亡した場合に支給されるのが遺族給付です。

 

遺族補償給付又は遺族給付は、「遺族補償年金・遺族年金」か「遺族補償一時金・遺族一時金」のどちらかが支給になります。

 

「遺族補償給付・遺族給付」については、原則として偶数月ごとに年金の支給となりますが、遺族が死亡した当時、労災保険年金を受ける資格者がいないときは遺族補償一時金又は遺族一時金での支給となります。

 

遺族補償年金の受給資格者と受給権者の違いについてはこちらをご覧ください。

 

業務または通勤災害で死亡の場合の給付金判定図

 

労災保険死亡の遺族年金等に分類

 

遺族補償年金・遺族年金について

遺族補償年金・遺族年金は、下記表の通り、遺族の数に応じての額の年金とし、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の6回に分けて支払われます。

遺族の数 年金額
1人

給付基礎日額の153日分、
ただし、その遺族が55歳以上の妻又は一定の障害の状態にある妻の場合は給付基礎日額の175日分

2人 給付基礎日額の201日分
3人 給付基礎日額の223日分
4人以上 給付基礎日額の245日分

 

①遺族特別支給金②遺族特別年金③遺族特別一時金について

遺族補償給付等が支給される場合には、それに加えて社会復帰促進等事業から①遺族特別支給金②遺族特別年金③遺族特別一時金のいずれかが支給されます。

 

①遺族特別支給金

遺族特別支給金は、業務災害または通勤災害により、労働者が死亡した時に以下の受給者に一律300万円支払われるものです。

 

  • 労働者の死亡当時の最先順位の遺族補償年金もしくは遺族年金の受給資格者
  • 遺族補償一時金もしくは遺族一時金の受給権者

つまりは、受給権者がいるいないに関わらず、遺族特別支給金は支給されます。

 

②遺族特別年金

遺族特別年金は、遺族補償年金又は遺族年金の受給権者に対して支給されます。
支給される額は、下記の表のとおりです。

 

※ 遺族補償年金又は遺族年金の受給権者が2人以上あるときは、次の表に掲げる額を受給権者の人数で除して得た額が、各受給権者の受給額となります。

遺族の数 年金額
1人 算定基礎日額の153日分
ただし、その遺族が55歳以上又は一定の障害の状態にある妻(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった方を含みます。)の場合は算定基礎日額の175日分
2人 算定基礎日額の201日分
3人 算定基礎日額の223日分
4人以上 算定基礎日額の245日分

遺族補償年金又は遺族年金が受給権者の所在不明又は若年により支給停止とされている間は、同様に遺族特別年金も支給停止になります。

 

 

遺族特別一時金について

遺族特別一時金は、遺族補償一時金又は遺族一時金の受給権者に対して支給されます。
支給額は以下のとおりです。

 

  • 労働者の死亡の当時、遺族補償年金又は遺族年金の受給資格者がないとき…算定基礎日額の1,000日分
  • 遺族補償年金又は遺族年金の受給権者がすべて失権した場合に、受給権者であった遺族の全員に対して支払われた遺族特別年金の合計額(当該支給された遺族特別年金を遺族補償年金とみなして厚生労働大臣が定める換算率を乗じた額とします。)が算定基礎日額の1,000日分に達していないとき…算定基礎日額の1,000日分とその合計額との差額

※ なお、遺族補償一時金又は遺族一時金の受給権者が2人以上あるときは、等分した額がそれぞれの受給権者の受給額となります。

遺族補償一時金又は遺族一時金について

遺族補償一時金・遺族一時金とは、労働者が業務上の事由により死亡した場合に、労働者の死亡の当時、遺族補償年金又は遺族年金の受給資格者がいないときに遺族補償一時金が給付基礎日額の1,000日分が支給されるものです。

 

通勤災害により死亡した場合には、遺族補償一時金同様に「遺族一時金」という名目で給付基礎日額の1,000日分が支給されます。

 

遺族補償年金又は遺族年金の受給権者が最後順位者まですべて失権し以下に該当する場合

 

受給権者であった遺族の全員に対して支払われた年金の額及び遺族補償年金前払一時金又は遺族年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額の 1,000日分に達していないとき
この場合は、給付基礎日額の1,000日分とその合計額との差額が支給されます。

 

遺族補償一時金又は遺族一時金の受給権者

遺族補償一時金又は遺族一時金の受給資格者は、下記の1~4に掲げる遺族で、最先順位者が受給権者になります。

 

1位 配偶者
2位 労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持されていた子・父母・孫・祖父母
3位 その他の子・父母・孫・祖父母
4位 兄弟姉妹

 

2と3については、子・父母・孫・祖父母の順位になります。

 

遺族補償年金前払一時金又は遺族年金前払一時金

遺族補償年金前払一時金・遺族年金前払一時金 は、遺族補償年金・遺族年金を受けとる受給権者の希望がある場合に、以下のまとまった金額を受け取ることができる制度です。

 

前払い一時金の額 Edit

 

給付基礎日額の

 

  • 200日分
  • 400日分
  • 600日分
  • 800日分
  • 1,000日分

 

前払い一時金を受取るとその額に見合う期間の年金は支給停止になりますが、それだけではなく2年目から金利年5%の単利に見合う額が割り引く計算をしますので、通常年金で受け取る分よりもマイナスになります。

 

前払い一時金のQ&A

いつでも前払い一時金の請求はできますか?

原則は、遺族補償年金又は遺族年金の請求と同時となっていますが、遺族補償年金又は遺族年金の支給決定の通知のあった日の翌日から1年以内であれば認められます。

 

前払い一時金は何回も請求できますか?

同一死亡労働者について1回しか認められていません。しかし、先順位者が前払一時金の支給を請求していない場合には、請求することができます。

 

遺族補償年金または遺族年金を受けとった後に前払金の請求はできますか?

支給決定の通知のあった日の翌日から1年以内であれば、給付基礎日額の1,000日分から支給済みの年金額を減じた額の範囲内での請求であれば認められます。

 

前払い一時金を受けていた者が亡くなり、まだ支給停止期間中であった場合には次の受給権者はどうなりますか?

支給停止期間が満了していないので、新たな受給権者も年金の支給停止が続きます。

労災の葬祭料または葬祭給付

葬祭料又は葬祭給付は、労働者が業務上又は通勤の事由により死亡した場合に支給されるものです。

 

給付額について

給付基礎額、315,000円※に給付基礎日額の30日分を加えた額になります。
ただし、給付基礎日額の60日分に満たない場合には、給付基礎日額の60日分とされています。(※)平成12年4月改定

 

葬祭給付のQ&A

会社や友人が葬祭を行っても葬祭費の支払はありますか?

遺族が葬祭をまったく行わないことが明らかな場合においては、会社(事業主)や友人等が葬祭を行ったときには、葬祭料又は葬祭給付は事業主又は友人等に支給されることになります。

 

まとめ

労災保険保険の加入者が亡くなった場合には以下のようなケースごとで分けられ補償金が支給されます。

 

①業務災害で死亡し受給権者がいる場合

  1. 遺族補償年金
  2. 遺族特別支給金
  3. 遺族特別年金
  4. 葬祭料

 

②業務災害で死亡し受給権者がいない場合

  1. 遺族補償一時金
  2. 遺族特別支給金
  3. 遺族特別一時金
  4. 葬祭料

 

③通勤災害で死亡し受給権者がいる場合

  1. 遺族年金
  2. 遺族特別支給金
  3. 遺族特別年金
  4. 葬祭料

 

②通勤災害で死亡し受給権者がいない場合

  1. 遺族一時金
  2. 遺族特別支給金
  3. 遺族特別一時金
  4. 葬祭料

 

以上、「労災保険の遺族年金はややこしいので図で説明しています」についての記事でした。

 

該当カテゴリー:労災保険
関連カテゴリー:雇用保険(失業保険)健康保険