児童扶養手当は、父母が離婚や父母のどちらかが死亡したなどの児童に対して国から支給される手当です。子ども1人に対しての手当が基本となり2人目、3人目の手当は加算するイメージになります。
ただし、所得によっては、支給されない場合がでてきます。いわゆる「所得制限」です。そこで、このページでは児童扶養手当(母子手当)の金額や所得制限、そして請求手続きに必要な書類、一部支給停止適用除外事由届出書について解説します。
2019/01/05 18:54:05
児童扶養手当とは?支給金額はいくら?
児童扶養手当とは、父母が離婚や父母のどちらかが死亡したなどの子どもに対して国から支給される手当です。ここでいう子どもとは、18歳に達する日以後最初の3月31日までの児童または20歳未満で中度以上の障害がある子をいいます。
それでは、最新の児童扶養手当(母子手当)の金額について解説します。
全部支給の場合(平成30年4月~31年3月まで)
全部支給される場合とは、扶養親族の人数と受給者の所得制限限度額が関係してきます。所得制限については次の項目で説明しています。
児童の人数 |
支給額 |
児童1人の場合 |
月額42,500円 |
児童2人の場合 |
月額52,540円 |
児童3人の場合 |
月額58,560円 |
児童3人目以降、1人増えるごと |
月額6,020円加算 |
児童扶養手当が一部支給の場合の計算式
平成30年4月改正
児童1人のときの月額=42,490円-(受給者の年間所得額※1-所得制限限度額※2)×0.0187630
児童2人目の加算額=10,030-(受給資格者の所得額※1-所得制限限度額※2)×0.0028960
児童3人目以上の加算額=6,010-(受給資格者の所得額※1-所得制限限度額※2)×0.0017341
※1 年間就労所得から諸控除を引いた金額
※2 所得制限限度額表の「父、母又は養育者」欄の「全部支給の所得制限限度額」の金額
児童扶養手当はいつ(何日に)受け取れるの
児童扶養手当の支給が認定されますと、認定の翌月分からとなりますが、現状では毎月の支給ではなく、表のように支払い期が年3回と決まっています。
支給日が11日でも土日や休日にあたる場合はその前に振込になります。
一度手続きをすればそれで毎年受取れるわけではありません。毎年8月が更新となっていて、7月中には現況届のご案内が届きますから、8月31日までには提出が必要です。
現況届については、こちらの児童扶養手当の現況届とは?いつ届くの?をご覧ください。
支給月 |
支払日 |
内訳 |
4月 |
11日 |
12~3月分 |
8月 |
11日 |
4~7月分 |
12月 |
11日 |
8~11月分 |
ちなみに別に児童手当がありますが、こちらの手当の支払時期は、毎年6月(2月分~5月分)、10月(6月分~9月分)、2月(10月分~1月分)ですから、どちらも該当する場合にはどちらかの手当を偶数月には受取ることができます。
また、児童手当は、最高でも1人あたり15,000円(0歳~3歳未満の場合)ですから、児童扶養手当よりは少ない金額の振込になります。
児童扶養手当を受取れる年齢と条件とは
児童扶養手当を受取れる児童の年齢は、18歳に達する日以後最初の3月31日までの児童または20歳未満で中度以上の障害がある児童です。
また、以下の要件に該当した方が児童扶養手当を受け取ることができます。
- 父母が離婚した児童
- 父母どちらかが死亡した児童
- 父又は母が政令で定める程度の障害の状態※にある児童
- 父、または母の生死が明らかでない児童
政令で定める障害状態とは以下のものになります。
- 両眼の視力の和が0.04以下のもの
- 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
- 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両上肢のすべての指を欠くもの
- 両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両下肢を足関節以上で欠くもの
- 体幹の機能にすわっていることのできない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働することを不能ならしめ、かつ常時の介護を必要とする程度の障害を有するもの
- 精神に労働することを不能ならしめ、かつ常時の監視又は介護とを必要とする程度
- の障害を有するもの
- 傷病が治らないで、身体の機能又は精神に、労働することを不能ならしめ、かつ長期にわたる高度の安静と常時の監視又は介護とを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生労働大臣が定めるもの
*(備考)視力の測定は、万国式試視力表によるものとし、屈折異常があるものについては、矯正視力によって測定します。
児童扶養手当(母子手当)の所得制限について
児童扶養手当は、一定以上の所得がある方には、減額、またはまったく支払われません。減額されて一部支払われるものを一部支給といいます。一部支給になるか、不支給になるのかは、こどもの人数の他、扶養親族の人数と受給者の所得により応じて違います。
下記表は年収ではなく所得ですのでわかりずらいため、下記に計算事例を掲載していますのでそちらをご覧ください。
所得が制限を超えた場合には不支給となります。
児童扶養手当の所得制限額表
上記表の一部支給欄の所得制限限度額内であれば減額はされますが支給されます。
平成30年8月以降は全部支給の所得額が引き上げられます。
表の一番右の「扶養義務者・孤児等の養育者」の欄は、同居等している祖父や祖母に所得があり、所得制限限度額を超えていれば児童扶養手当は支給されないと見ます。
具体的には、子供を連れて実家に戻り、所得のある祖父や祖母と同居した場合などが該当してきます。ただし、住民票上で世帯は別であっても、実態としてみるため同居とみなされる場合があります。
つまり、自分に所得がなくても、同居とみなされる扶養義務者等に限度額以上の所得があれば児童扶養手当は支給されません。
児童扶養手当の扶養親族等の数について
扶養親族等の数は、税法上の扶養親族等のことをいいます。
扶養親族等の数は、給与所得者であれば、源泉徴収票で確認できます。
税法上の扶養親族等とは
以下に該当する前年の12月31日時点での人数をいいます。
16歳未満は、扶養控除の対象にはなりませんが、児童扶養手当上の扶養親族数には該当します。(下記源泉徴収票の左下の赤枠部分)
- 税法上の控除対象配偶者
- 扶養親族(施設に児童が入所している場合は当該児童を除きます)
- 扶養親族等でない児童
控除対象配偶者とは、その年の12月31日時点で、以下の四つの要件のすべてに当てはまる人をいいます。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が38万円以下であること。 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
具体的には、専業主婦や年間収入が103万円以内のパート主婦といえばわかりやすいでしょうか。
ただし、児童扶養手当が支給されるのは、父母が離婚した児童等ということで配偶者はいないわけですから、ここでは無視してください。児童手当の場合は、控除対象配偶者は関係してきます。
扶養親族とは、配偶者以外の家族で、所得が38万円以下の人をいいます。
「扶養親族等でない児童とは」、血のつながりがない児童を養育している場合をいいます。
扶養親族0人とは?
所得制限限度額表には「扶養親族0人」とありますが、これはどういうことでしょうか?子どもがいるのに扶養親族が0人とは?
たとえば、夫・妻・子ども(18歳未満)の3人家族とします。子供は父親の扶養に入っていましたが、離婚後は母親が子ども引き取った場合。この場合は、子どもは税法上、母親の扶養ではなかったため扶養親族数は「0人」となります。離婚してまもないときはこのようになるケースがあります。
扶養親族の数え方事例1
例えば母と小学生の子ども2人の3人家族の場合。この場合には扶養親族は2人です。もしその方に生計を一緒にしている母親がいる場合で、その母親の所得が38万円以下であるならば扶養親族は3人になります。
扶養親族の数え方事例2
母と子供2人の家族3人。そのうちの子供1人は、平成27年5月生まれ。扶養親族の数え方としては、前年の12月31日時点でみるので、平成27年5月時点では扶養親族は1人になります。
↓↓このようなこともあります!
児童扶養手当が実家に入ったことでもらえなくなった体験
児童扶養手当は申請時期によって所得年度が違う
以下のように申請時期によって審査対象となる所得年度が違っています。
- 1月から6月までに申請すると・・・ 前々年の所得
- 7月から12月までに申請すると・・ 前年の所得
すでに児童扶養手当(母子手当)を受給している場合は、毎年8月に前年の所得を確認し、8月分以降の手当額が決定されます。
次の項目は計算事例を下記に載せていますのであわせてそちらもご覧ください。
児童扶養手当(母子手当)の所得とはどういう計算するの?
児童扶養手当の所得とは、受給者の前年の所得額=収入-給与所得控除-諸控除(障害者控除、特別障害者控除等)-8万円(社会保険料控除額)+養育費の8割相当額です。
給与所得のみの方であれば、収入-給与所得控除とは下記源泉徴収票の赤枠の部分になります。
確定申告をされた方は以下の部分です。
前年の所得が下記表の額以上の方は、その年度(8月から翌年の7月まで)の手当の一部または全部が支給停止になります。
次の項目は児童扶養手当の計算事例です。
児童扶養手当の計算をしてみました
児童扶養手当(母子手当)の計算事例1
この計算事例は、平成28年8月からの金額で計算しています。
母子家庭で小学生の子どもひとり、本人の年収が230万円の場合(諸控除は定額控除の8万円、養育費は無しとします)
年収と所得とは違いますのでご注意ください。年収が230万円であれば給与所得控除は87万円ですから143万円が所得ということになります。給与所得控除については国税庁のページをご覧ください。
所得の計算式は、収入-給与所得控除-諸控除(障害者控除、特別障害者控除、寡婦(夫)控除等)-8万円(定額控除)+養育費の8割相当額です。所得から差し引ける諸控除については次のものがあります。
- 老人扶養親族:10万円
- 老人控除対象配偶者:10万円
- 特定扶養親族及び控除対象扶養親族:15万円
- 特別障害者控除:40万円
- 障害者控除:27万円
- 勤労学生控除:27万円
- 寡婦控除:27万円(受給者が母の時は対象外)
- 寡父控除:27万円(受給者が父の時は対象外)
- 特別寡婦控除:35万円(受給者が母の時は対象外)
- 雑損控除:控除相当額
- 医療費控除:控除相当額
- 小規模企業共済等掛金控除:控除相当額
特定寡婦控除とは?
寡婦(離婚した後婚姻をしていない人等)に該当する方が次の要件のすべてを満たすときは、特定の寡婦に該当し、寡婦控除の額27万円に8万円を加算した35万円とする特例です。ただし、児童扶養手当については、受給者が母の場合は該当しません。(養育者等は該当)
1)夫と死別し又は離婚した後婚姻をしていない人や夫の生死が明らかでない一定の人
2)扶養親族である子がいる人
3)合計所得金額が500万円以下であること
ということで、事例の場合には次の式になります。
230万円(収入)-87万円(所得控除)-8万(定額控除)-0円=135万円
次に手当の計算式であります42,320円-(申請者の所得額-全部支給所得制限限度額※)×0.0186879にあてはめます。 ※10円未満四捨五入
扶養親族は1名になりますので、570,000円が全部支給所得制限限度額になります。
42,320円-(135万円-57万円)×0.0186879=42,320-14,580円=27,740円(月額)
結果、このケースでは14,580円削減され、月額27,740円受取れます。
児童扶養手当(母子手当)の計算事例2
母子家庭で小学生の子どもひとりと父(祖父)がいる家族3人。
上記と同じで本人の年収が230万円という場合(諸控除は定額控除の8万円、養育費は無し、父は扶養親族で所得は所得制限額以下とする)
上記と本人の年収は同じですが、扶養親族が2人になり所得制限限度額95万円ありますので、計算式が違ってきます。
42,320円-(135万円-95万円)×0.0186879=42,320円-7,480円=34,840円
結果、7,480円削減され月額34,840円受取れます。
ところで、児童扶養手当(母子手当)に関しての法律ってあるの?
児童扶養手当(母子手当)は、児童扶養手当法というのがあり、その法律に基づき運営されています。
(児童扶養手当法の目的)
第一条 この法律は、父又は母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与するため、当該児童について児童扶養手当を支給し、もつて児童の福祉の増進を図ることを目的とする。
児童とは何歳までのこと
「児童」とは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者になります。また政令で定める障害の状態にある20歳未満の者をいいます。
ですから、8月が誕生日の場合に、高校3年生の8月で18歳になりますが、翌年の高校卒業の3月31日までを児童といいます。障害の状態にある子は、20歳未満までとなります。
請求にはどんな書類が必要なの?
児童扶養手当の認定請求に必要な書類は以下になります。
- 請求者及び対象児童の戸籍謄本(発行から1か月以内のもの)
- 印鑑
- 健康保険証
- 請求者名義の振込先口座のわかるもの
- 年金手帳
- 該当年度の所得及び課税状況が分かる書類(課税・所得証明書)
※ 平成28年1月1日から、個人番号(マイナンバー)が導入されたため、申請者、対象児童及び扶養義務者の個人番号を記載することになりました。
その他、状況によって必要な書類がありますので、お住まいの市・区役所や町役場等にお尋ねください。
一部支給停止適用除外事由届出書とはどういうもの?
児童扶養手当(母子手当)を受給し始めてから5年等※が経過するとこの一部支給停止適用除外事由届出書が担当の役所から送られてきます。
こちらの内容は、厚生労働省の児童扶養手当一部支給停止措置に関する事務の流れと中野区の児童扶養手当一部支給停止適用除外届出についてを情報源としてまとめたものです。
一部支給停止適用除外事由届出書は、「もう児童扶養手当を受け取ってから5年経過したのだから特別な事情がないのなら働いて頂戴ね、そうしないなら手当は半分にカットしますよ」というニュアンスのものになります。
※経過期間については以下のいずれか早いほうを採用します。
- 支給開始月の初日から起算して5年。ただし児童扶養手当を請求した時に子どもが3差未満の場合は3歳に達した月の翌月の初日から起算して5年になります。
- 児童扶養手当の支給要件に該当する日に至った日の属する月の初日から起算して7年。離婚して2年以上経過してから児童扶養手当を申請して受給しはじめたような場合は、こちらのケースを採用します。ちなみに児童扶養手当に該当する場合には請求の時効はありません。
ただし、以下の項目に該当する方はこの書類と添付書類を提出すれば今までどおり手当を受取ることができます。
一部支給停止から除外される人
- 働いている人
- ハローワーク等に通って求職活動をしている人
- 体や精神的に障害がある人
- ケガ又は病気により就職することが困難な人
- 子どもに障害があったり、ケガや病気、あるいは要介護状態にあって自身が介護しているため就職することが困難である人
児童扶養手当のまとめ
児童扶養手当(母子手当)は、父母が離婚した児童や父母どちらかが死亡した児童が受取ることができる手当です。「児童」とは、18歳に達する日以後の最初の3月31日まで、障害の状態にあるものは20歳未満をいいます。
全部支給で受取れる児童扶養手当は次のとおりです。平成29年4月から改定されています。
- 児童1人目:月額42,290円
- 児童2人目:月額52,280円
- 児童3人目:月額58,270円
- 児童3人目以降、1人増えるごとに月額5,990円加算
このような金額になっていますが、所得が制限額以上になると全額支給停止、または一部が支給停止になります。
児童扶養手当(母子手当)が受取れる場合は、4ヶ月分を年3回に分けて、10日か11日ころに支給されます。
当ページは、厚生労働省のリーフレット、座間市の児童扶養手当、ジョイス名古屋の児童扶養手当シミュレーション、大津市の児童扶養手当の算出方法などの情報源を参考に作成しました。
以上、「児童扶養手当から受取れる金額と所得制限の関係はどうなっているの?」についての解説でした。