プロパンガス

家でお湯を沸かす、煮物をする、魚を焼く、お風呂を沸かすなどで「ガス」を使う家庭は多いと思います。
でもどこの家庭でも同じガスを使用しているわけではありません。家庭用ガスには主に都市ガスとプロパンガス(LPガス)の2種類があるからです。

この二つは原料はもとより家庭で使えるようになるまでの供給に違いがありますが、毎月支払う料金もだいぶ異なっています。東京ガスの調査によりますと「東京都の場合、都市ガスのほうがプロパンガスよりも年間62,364円安い」となっています。

それならば「都市ガスを使いたい」と思うところですが、そう簡単にはいきません。都市ガスはガス会社の供給エリアが決まっていますし、そもそも設備も違っているためにどこの家庭でも使いたくても使うことができません。そこで、プロパンガスでも適正価格よりも高い料金ならば引き下げることはできますので、この点についてと、また都市ガスとプロパンガスの違いについて解説します。ご覧ください。

 

2017/01/06 11:25:06

都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違い

生まれ育った環境が都市ガスを使っていてその後も同じ環境にいるならば、プロパンガスについてはあまり知らないでしょう。その逆もしかりかと思います。そこでまずは、都市ガスとプロパンガスの違いについての説明です。不要な方は読み飛ばして次の項目からご覧ください。

LPガスとは、Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)のことをいい、液化しやすいガスの総称です。主成分としてプロパンとブタンがありますが、主成分がプロパンのほうをプロパンガス。ブタンのほうをブタンガスといいます。

都市ガスとプロパンガスの主な違い

両者の主な違いを箇条書きにしてみました。

1、都市ガスの主原料は、LNG(液化天然ガス)で主成分は、メタンガスです。LPガスの主原料はLNG(液化天然ガス)で、主成分は、プロパンとブタンです。

2、都市ガスは空気より軽いがプロパンガスは空気より重い。

3、地震など大規模災害時には都市ガスよりもプロパンガスのほうが復旧が早い。

4、プロパンガスは都市ガスと違いガス導管を埋設する必要がなく、容器に充てんすればいいため山間部でも使うことができる。

5、都市ガスの業者(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスなど)は全国に209社(公営29事業者)ほどですが、プロパンガス販売会社は全国に21,052社あります。(平成25年3月末現在、出典:資源エネルギー庁)

6、都市ガスは、先に配管等の設置費用を支払う(分割払いもある)が、プロパンガスは、無料で配管設置をし、その分を料金に含めて徴収する契約(無償貸与契約)がある。この場合は、途中で業者を替えられると困るので10年~15年の縛りがある。

7、都市ガスよりもプロパンガスのほうが熱量(カロリー)が2.2倍ほど高く発熱量はプロパンガスの方が優れています。しかしながらお湯を沸かすなどの調理にかかる時間は、都市ガスはその差を埋めるよう供給量を多くしているため調理時間としては変わりはありません。

8、一般的には都市ガスのほうがプロパンガスよりも料金は安い。
例として、料金を比較してみます。「東京ガス」の一般契約においては、0㎥から20㎥まで基本料金745.20円(月額)、従量料金1㎥あたり142.66円です。月額料金=基本料+従量料金です。

一方、一般社団法人プロパンガス料金適正化協会の適正価格によりますと、プロパンガスの基本料金は1,500円、従量料金は1㎥あたり300円~330円です。

一般社団法人プロパンガス料金適正化協会のホームページ


これだけを比べるとプロパンガスのほうが高いとなりますが、先ほども述べたように使用量は都市ガスのほうが2.2倍使うので、従量料金はほぼ変わりません。

プロパンガスの基本料が高い理由としては、ボンベを運ぶ車の燃料費や人件費、メーターの検針費用などがあるためです。また、初期導入費用を無料にしている代わりに基本料金に含めていることもあります。

都市ガスとプロパンガスの供給方法の違い

都市ガスの原料はLNG(液化天然ガス)です。90%が海外(マレーシアやオーストラリアなど)からの輸入です。輸入した液化天然ガス(LNG)は、下記画像のような大きな球形タンクにためます。そこからガス管を通してガス会社のガスの貯金箱とも言われるガスホルダー(ガスタンク)に送られます。さらにガス管を通して各家庭に届けられるようになっています。
ガスタンク

一方、プロパンガス(LPガス)も原料となる液化石油ガス(LPG)を4分の3は海外(カタールやアブダビなど)から輸入します。液化石油ガス(LPG)も都市ガス同様にLPガスタンクに貯められます。そこから、ガスの導管ではなく、タンクローリーによって充填所へ運ばれボンベに詰められます。そしてLPガス事業者が各家庭にボンベで運ぶ仕組みになっています。

尚、住宅団地内にボンベ庫を設置して小規模な導管を使って70戸以上のお宅にプロパンガスを供給する業者(簡易ガス事業者)もあります。

プロパンガス

都市ガスとプロパンガスの使用割合

LPガス振興センターの平成 22 年度石油製品需給適正化調査によりますと、関東・甲信越等で家庭で使われているガスの割合等は以下の割合になっています。

県名

使用ガス等の割合(%)

LPガス

都市ガス

オール電化

東京

13

85

1.9

千葉

32.9

60.1

5.5

神奈川県

36.8

59.9

2.2

埼玉県

50.6

40.3

5.7

群馬県

70.4

17.8

8.1

茨城県

70.7

16.1

8.5

栃木県

72.2

12.1

11.3

山梨県

74.1

8.4

13.3

長野県

67.4

19

11.4

新潟県

30.8

64.9

3.3

静岡県

50.6

32.2

14.6

東京においては都市ガス使用割合が85%と高くなっていますが、逆に茨城、群馬、栃木などはプロパンガスの割合が70%台となっているのがわかります。

以上が、都市ガスとプロパンガス(LPガス)の主な違いです。次は、プロパンガス(LPガス)の料金とその節約についてです。

あなたが支払っているプロパンガスの料金は高い?それとも適正価格?

毎月支払っているプロパンガスの料金は高いのか、それとも適正な価格なのか、これを把握しないことには節約も何も行動に移せません。


プロパンガスの適正価格

先にも記述しましたが、一般社団法人プロパンガス料金適正化協会のホームページによりますと、「プロパンガスの適正価格」は、基本料金が1,500円、1m3あたりの単価は300円~330円としています。

プロパンガス料金適正化協会

このような価格になっていますが、基本料も従量(使用した分)の料金も把握されていないと思いますので、まずは、領収書か請求書を用意して下記のサイトで診断をしてみてください。

家庭におけるプロパンガスの平均的使用量

プロパンガスの適正価格はわかりましたが、では家族人数によって実際にどのくらいの使用しているのか気になるところです。
そこで調べてみました。データは古いですが、資源エネルギー庁の「平成18年度プロパンガス消費実態調査」によりますと、家族人数別平均使用量では次のようになっています。


出典:資源エネルギー庁

家族人数

使用量(㎥)

2人以下

6.5

3人

8.9

4人

11.3

5人

11.7

6人

12.0

7人以上

11.8


以上の使用量から1m3あたりの単価を300円として計算しますと、家族別人数の料金は次のようになります。消費税は含めていません。

 家族人数

 ガス料金(基本料含む)

 2人以下

3,450円

 3人

4,170円

 4人

4,890円

 5人

5,010円 

 6人

5,100円 

 7人以上

5,040円


 

 

高いプロパンガス(LPガス)の料金を安くするには

毎月支払うプロパンガス(LPガス)の料金の基本的な形式としては、基本料と使用料金を合計した金額になります。

ガス料金={基本料+( 従量単価 × 使用量 ) } × 消費税です。※使用量に応じて段階的な料金単価を採用しているところもあります。

基本料金も従量単価も公共料金ではないため国や都道府県単位でこれといった決められた金額はありません。自由価格なので各ガス会社で異なっています。

ここまでの説明ですと、ガス会社が同じで使用量が同じならばガス料金は同じと思うのが普通です。つまり隣同士で同じガス会社を使い、使用量が同じならば料金は変わらないはずです。

ところが、隣同士でも料金単価が違うことがあるのです。

なぜこういった違いが生まれるのか?

プロパンガスの料金は、公共料金みたいな感覚があり、通常は値下げ交渉などしません。業者の決められた金額をそのまま支払っています。

ところが、お客さんによってはもっと安くしてとか、安くしないなら他の業者へ交換するなどと言う人がいます。業者としては、他に替えられるくらいなら安くしたほうがいいということで値下げをすることがあります。このようなことで交渉をした人としない人の差が出てくることになります。

住宅ローンでも起こります

余談ですが、住宅ローンでもこういった違いは起こります。
数年前の高い金利で借りていると、現状の超低金利ではだいぶ違っています。そうなると他の銀行の住宅ローンへの借換えが頭にが浮かぶかと思います。でも借換えはなんだかんだいっても諸費用もかかりますし、書類への記入や手続きもあるので結構大変な作業になります。さらに審査が通るかどうかの問題もでてきます。

そこで、その前に住宅ローンを借入れている銀行に交渉してみることをお勧めします。交渉といっても、銀行に出向くのではなく電話でもOKです。「借換えを考えていますが、その前に、御社で金利を引き下げることができないか検討してほしい」と伝えるだけです。

実際に何人もの方がこのようにして金利を引下げることができています。このように住宅ローンであってもガス料金と同じで交渉するかしないかで違ってきてしまいます。

ということで、プロパンガスの料金については、まずはガス料金が適正かどうか診断をしてみてください。

プロパンガスの元値はいくら?

料金についていろいろ見てきましたが、実際に海外からいくらで輸入し、ガス販売会社はいくらで仕入れているのか気になるところです。

日本LPガス協会の「LPガス価格の推移」によりますと、次のようになります。

流通段階におけるLPガス価格

2016年11月の値段です。
産ガス国→→→輸入業者:1トンあたり41,949円(CIF価格)
卸売業者→→→小売業者:1トンあたり104,800円(卸売価格)
小売業者→→→最終消費者:1トンあたり333,930円(東京・家庭用小売価格)、10㎥あたり6,928円

※CIF価格とは、価格と保険、輸送費を含めた価格をいいます。

10㎥あたりの東京家庭用LPガスの小売価格

10㎥あたりの東京家庭用小売価格の年度推移

  • 2011年度:6,638円
  • 2012年度:6,713円
  • 2013年度:6,712円
  • 2014年度:6,937円
  • 2015年度:6,545円
  • 2016年度:6,928円

アパートや賃貸マンションのプロパンガスは高いけど・・・

統計を見ても戸建てよりも賃貸マンションなどのプロパンガス料金は高い傾向にあります。なので安くするために見直しをしたいところですが、アパートの各部屋ごとにプロパンガス会社を替えるわけにはいきません。

元が一緒のボンベなので当たり前ですが・・・。

戸建てならば自分の意志で直接業者を替えてしまうことはできますが、集合住宅(アパート・賃貸マンション・分譲マンションなど)では、オーナーや管理組合の承諾を得る必要があります。

プロパンガス会社は、設備を無償設置しているのがほとんどなので、基本的には、10年から15年間の契約を交わしています。そのため途中で替えると残金を支払うことになりますので、その間はオーナーは承諾しないのが普通です。

まずは、ガス会社と交渉してみる。また、ガス会社によって料金が大きく違っていることを知らないオーナーもいますので伝えてあげる意味も含めてオーナー、もしくは不動産管理会社に相談してみることをおすすめいたします。

まとめ

家庭のガスには、都市ガスとプロパンガスがあります。
一般的に料金は都市ガスのほうが安いですが、適正価格にすることで、大きな差はなくなってきます。

適正価格とは、一般社団法人プロパンガス料金適正化協会のホームページによりますと、「プロパンガスの適正価格」は、基本料金が1,500円、1m3あたりの単価は300円~330円です。

これよりも高い場合には、業者に相談するか、変更することで安くすることができます。
アパートなどの集合住宅においては、ガス販売業者を替えるには、オーナーの承諾が必要になります。以上、「プロパンガスが高いと思ったら節約できるか確認してみよう!」でした。