順調に返済していた住宅ローンもある時を境として払えなくなることがあります。
主な理由としては、会社の倒産や解雇、病気で働けなくなった、教育費による支出増、2段階金利で住宅ローンの支払いが増えた、サラ金からの借入により支払が増えたなどがあります。
このようなことで返済ができなくなった場合にどのような流れになるのかと対処法について解説します。
住宅ローンを払えなくなった原因
冒頭でも住宅ローンを払えなくなった(滞納)原因として、失業や病気で働けなくなった、離婚、多重債務などがあるとしましたが、過去に住宅ローン相談を受けたときの事例をご紹介します。
売上が落ちて住宅ローンが支払えない
サラリーマンから自営業者になる。自分が想い描いたように売上が順調に進めば問題ありません。
相談者の方は、最初のうち1年半は順調な売上だったそうですが、新規算入業者が増えたり、商品やサービスの話題性がなくなり売上が落込んでしまったそうです。
いろいろと手は尽くしてみたが回復はせず、当然それに伴い収入も減ってしまい、とうとう住宅ローンが払えなくなってしまった。
会社の業績が思わしくなく人員削減に該当した
会社も業績がいいときは夏・冬のボーナスも気前よく支払ってくれますが、リーマンショックのときのように一気に会社が傾くような出来事があると人員削減に走ります。
多少給料が減っても再就職できれば住宅ローンも支払えますが、相談者の方は、年齢が50半ばでなるとなかなか就職先見つからず、子どもも高校3年生なので失業手当だけでは家計費が不足して住宅ローンが支払えなくなってしまった。
離婚により夫が住宅ローンを払えなくなくなったら困る
マイホームを購入するときには、まさか離婚するなんてまったく頭になかった。
優しい人で子供にもよき父で仕事に対してもまじめで何も問題がなかったから。
ところが、夫はパチンコにはまってしまい、気が付いたら数百万円単位の借金。一度が我慢して貯金を崩して返済したが、同じことを繰り返したのであきらめて離婚。
私が家を出て、夫が家に残ったが、わたしは連帯保証人になっているので、夫が住宅ローンの返済ができなくなったらと思うと心配でしょうがない。
住宅ローンを借り入れるときに夫の収入だけでは足りず、妻の収入を合算し、連帯保証人や連帯債務者になることはよくあります。この場合には離婚してもその立場は変わらず返済責任は残りますので注意が必要です。
住宅ローンが払えなくなった場合の流れ
住宅ローンが払えなくなった場合にどうなるのか。滞納をしたからといってすぐに退去を命じられたり、差し押さえされるわけではありません。次のような流れでことは進んでいきます。
まず、住宅ローンの支払いが1~3ヵ月滞納しはじめると、金融機関から書類が届きます。「ローンについてのご案内」や「督促状」などという名前の書類です。
そしてさらに3~6ヵ月滞納しますと「期限の利益喪失通知」が届きます。「期限の利益」とは、借入金は各期日がくるまで決められた金額を返済できることを言います。つまり毎月分割して支払うことができる権利のことになります。
しかし滞納によってこの分割で支払える権利が無くなってしまうのが、喪失(そうしつ)になります。そのため住宅ローンの残債務をただちに一括支払わなければならないことになります。
さらにその後には、保証会社から「代位弁済」に関する通知が送られてきます。
代位弁済とは、保証会社が滞納した住宅ローンを滞納者に代わって金融機関へ借入残高を一括で支払うことをいいます。
ですので、住宅ローンの債権は、金融機関から保証会社に譲渡されます。
その後、代位弁済された場合には、保証会社等から残債務(住宅ローンの残金)を一括請求されることになります。また、債権回収の委託を受けた債権回収会社より債権委託の通知書が届くケースもあります。
支払いが滞っているくらいなのですから、当然一括弁済などできません。そのため、保証会社が裁判所に差し押さえを申し立てを行います。
その後、裁判所から差し押さえを知らせるための通知として「競売決定通知書が届き、競売開始となっていきます。
もちろん競売されたからといっても、残債の返済が免除されるわけではありません。
競売は、市場価格の約半分になってしまいますから、それよりも任意売却されたほうが通常は残債額を減らすことができます。
ではこの任意売却とはどうのようなものか簡単に説明します。
競売とは異なる任意売却とはどういうもの
競売手続きをされてしまう前に話し合いの元で債権者に抵当権を外してもらうことに合意すれば、債務者(住宅ローンを借りている人)の意志で不動産を売却することができます。
このことを「任意売却」と言います。
任意売却のメリットとしては、競売されるよりも任意売却のほうが高く売れる可能性があり、残りの借金を少しでも削減できますので、両者にとってメリットがあります。
例えば、3000万円のローンが残っていて、競売では1500万円で売却が想定されているとしても、任意売却で2000万円で売却が見込まれれば、競売よりも500万円も多く借金を削減することができます。債権者からすればそれだけ多く返済してもらえるということになります。借りている方にとっては残債を減らすことができますので交渉しない手はありません。
交渉ごとになるので、任意売却の一手に受けて手続きを行ってくれる下記のような任意売却専門の業者もいます。
住宅ローンを滞納すると以上のような流れで進んでいきますが、その前にどんな対策があるのか見てみましょう。
住宅ローンを滞納する前の対策
滞納する前の対策についてみてみましょう。
銀行に相談してリスケしてもらう
住宅ローンの滞納をする前に融資元の金融機関に相談することで返済条件を変更してもらえる方法があります。
このことをリスケジュールと言います。略して「リスケ」といいます。
リスケには、①返済期間を延長する、②一定期間返済額を減らす、③ボーナス払いの分を毎月に回すなどがあります。
また、それぞれを組み合わせる方法もあります。
こちらについては、フラット35を取り扱う住宅支援機構の「月々の返済でお困りになったときは」のページが参考になります。
③以外は返済を先延ばしするだけなので総返済額は増えることになりますが、今後収入が増える見込みがある、しばらくすると学費など家計の支出が減るなどの見込みがあれば有効な手段になります。
それでは実際にどのくらいのリスケ申込があるのか統計をご覧ください。
金融機関1448社におけるリスケの申込件数
平成28年1月14日に金融庁から報道発表された統計によりますと次の件数になっています。
〇金融機関1448社における貸付条件の変更等の状況(住宅ローン向け)
リスケの申込件数と実行された件数、及び割合
年度 |
申込件数 |
実行件数 |
割合 |
---|---|---|---|
平成23年4月~平成24年3月 | 89,517 |
78,410 |
87.4% |
平成24年4月~平成25年3月 | 68,112 |
58,434 |
85.7% |
平成25年4月~平成26年3月 | 53,534 |
47,717 |
89.0% |
平成26年4月~平成27年3月 | 43,940 |
38,676 |
87.9% |
平成27年4月~平成27年9月※ | 19,079 |
16,940 |
88.8% |
※平成27年4月度においては半期分となっています。
住宅ローンの借換え
住宅ローンの借換えを検討してみる方法もあります。借換えによって返済額を減らすことができる場合があるからです。
ただし、住宅ローンを延滞してからでは、借換えはできません。直近の1年間に延滞があると借換えができないからです。過去に遅れがなく1回だけうっかりしたという場合には、可能な場合もあります。
借換えは、返済残期間を現状の住宅ローンと同じにする必要はありません。
例えば、ローンの残り期間が20年であっても、借換え先では完済年齢制限に掛からなければ30年にすることもできます。
借換えにより金利が安くなれば、当然同じ返済期間にしても現状よりも返済額は減らすことができます。そして返済期間を延ばすことでさらに減らすことができます。またボーナス払いのある方は、「ボーナス払いなし」にして上記の方法をとることもできます。
これでリスケと同じようにすることができますが、借換えは諸費用がかかりますので、リスケするのとどちらが有利なのか検討してみる必要があります。
アメリカでは住宅ローンが払えないとどうなる
米国の住宅ローンの仕組みをご紹介します。
米国では、住宅ローンが払えないとれば、家を手放せばそれで終わりになります。
なんと簡単なことでしょう。この制度をノンリコースローンといいます。
いくら家を売却して債務が残ったとしても支払う義務はなくなるのです。
つまりは、住宅ローンを払えなくなったのは、借りたほうが悪いのではなく、貸したほうに責任があるということなのです。
ところが日本では、リコースローンのため借り手の責任になっているため、自己破産が認められない場合以外ではどうしようと債務が残れば支払わなければならないことになってしまいます。
個人再生はマイホームは残すことができますが、その代わりに住宅ローンは減らすことはできません。
まとめ
いずれにしても、住宅ローンが支払えないとなってきましたら、決して、他から借り入れて住宅ローンの返済に回してはいけません。なぜならば住宅ローンよりも金利が安いローンはないため、よけいに負担を重くしてしまうことになるからです。
まず、やることは早めに借入先である金融機関に出向いて解決策を相談することです。
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