生命保険には必ず死亡保険金の受取人が指定されています。被保険者が死亡した場合には、その受取人が保険金を受取ることになりますが、はたしてこの場合に税金はどうなるのかについて解説したページです。
2016/05/09 20:13:09
生命保険の名義について
死亡保険金の税金の説明の前に、すでにご存知かとは思いますが、おさらいとして生命保険の名義について見てみましょう。
生命保険の契約には3つの名義があります。1、「契約者」、2、「被保険者」、3、「受取人」です。
〇契約者とは、生命保険を契約し、保険料の支払いをしていく人です。
〇被保険者とは、保障の対象になる人、保険がついている人です。
〇受取人とは、保険金を受取る人です。
定期保険や終身保険の契約にあたっては、「契約者、被保険者、受取人(死亡保険金)」は一般的には以下のような形態になります。
- 契約者:夫(妻)
- 被保険者:夫(妻)
- 受取人:妻(夫)
- 契約者:父(母)
- 被保険者:父(母)
- 受取人:子
- 契約者:本人
- 被保険者:本人
- 受取人:親
保険金受取人にも2種類あります
上記の契約形態は、定期保険や終身保険の満期保険金のない保険の場合です。
満期保険金のある養老保険や学資保険においては、次のような契約形態になります。
- 契約者:夫(妻)
- 被保険者:夫(妻)
- 死亡受取人:妻(夫)
- 満期受取人:夫(妻)
- 契約者:父(母)
- 被保険者:父(母)
- 死亡受取人:子
- 満期受取人:父(母)
- 契約者:本人
- 被保険者:本人
- 死亡受取人:親
- 満期受取人:本人
契約者と満期受取人が違う場合
上記の契約形態はすべて契約者=満期受取人になっています。
その理由は、税金の違いが関係してくるためです。
「契約者=満期受取人」は、税法上「一時所得」扱いになりますが、「契約者≠満期受取人」となると「贈与税」で計算されます。
保険料を負担した人と満期保険金を受取る人が違うからです。
一時所得よりも贈与税は税率が高いため契約者≠満期受取人とする契約は通常ありません。
生命保険と相続税の計算について
それでは、契約者≠死亡受取人の場合には、贈与税にはならないのでしょうか?
生命保険の死亡保険金を受取った場合には、「相続税」で計算されます。
生命保険の死亡保険金は、死んだ後に相続人が受取るものですので「みなし相続財産」といいます。死亡退職金などもそうです。
相続税の計算は、他の相続財産に死亡保険金の非課税部分を除いた額を加えたもので相続税は計算されます。
生命保険の非課税額とは、「500万円×法定相続人の数」で計算します。
たとえば、契約者:夫、被保険者:夫、受取人:妻という契約形態で生命保険の死亡保険金が4,500万円とします。
相続人が妻と長男、次男の合計3人ならば、500万円×3人=1,500万円は非課税になります。ですので、4,500万円-1,500万円=3,000万円を相続財産に加えます。※非課税金額計算する上で法定相続人数には相続を放棄した者も含まれます。
相続税の基礎控除額とは?
相続税にも基礎控除額があります。
相続税の基礎控除額とは、3,000万円+600万円×法定相続人の数(平成27年1月1日以後に相続が開始した場合)です。
このケースでは、3,000万円+600万円×3人=4,800万円の相続財産までならば相続税はかかってきません。
生命保険を受け取った場合の相続税の計算
たとえば相続財産が不動産や預貯金等含めて5,000万円あるとして、遺産は妻が3,000万円に生命保険の3,000万円を加えた6,000万円取得し、長男・次男とも1,000万円ずつ取得したとします。
これらの合計額である8,000万円(課税価格の合計)から先ほどの基礎控除額を引きます。
8,000万円-4,800万円=3,200万円
3,200万円=課税遺産総額です。
法定相続分に応じた取得額を計算
次に法定相続分に応じた取得額を計算します。このケースでは、妻2分の1、長男4分の1、次男4分の1です。
妻:3,200万円×2分の1=1,600万円
長男:3,200万円×4分の1=800万円
次男:3,200万円×4分の1=800万円
相続税総額の計算
上記で求めた取得額に以下の速算表から相続税を計算し総額を求めます。
妻:1,600万円×15%-50万円=190万円
長男:800万円×10%=80万円
次男:800万円×10%=80万円
相続税の総額=380万円
平成27年1月1日以後の場合の相続税の速算表
法定相続人の取得金額区分 |
税率 |
控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
あんぶ割合の計算をする
課税価格のうち、どのくらいの割合の財産を受取ったかのあんぶ割合を計算します。
妻:6,000万円÷8,000万円×100%=75%
長男:1,000万円÷8,000万円×100%=12.5%
次男:1,000万円÷8,000万円×100%=12.5%
各相続人ごとの相続税を計算する
相続税総額に各人あんぶ割合をかけます。
妻:380万円×75%=285万円
長男:380万円×12.5%=475,000円
次男:380万円×12.5%=475,000円
税額控除を適用します
配偶者は税額軽減が適用できます。配偶者は、法定相続分以内、もしくは法定相続分を超えていても1億6,000万円以内なら相続税はかかりません。
配偶者の税額軽減額=相続税の総額×次の①②のいずれか少ないほう÷課税価格の合計
①配偶者の法定相続分相当額(1億6,000万円に満たない時は1億6,000万円)
②配偶者の課税価格
このケースでの配偶者の税額軽減額は、380万円×6,000万円÷8,000万円=285万円
よって妻は285万円を引くことができます。
他に控除として、法定相続人が20歳未満の者については未成年者控除、障害者については障害者控除があります。
納付税額の計算
以上の計算結果から次の納税額になります。
妻の納税額=285万円-285万円(配偶者の税額軽減)=0円
長男の納税額=475,000円
次男の納税額=475,000円
ここでは、あんぶ割合を妻75%、長男12.5%、次男12.5%としましたが、法定相続分どおりに妻50%、長男25%、次男25%に分けていたら、妻の納税額はありませんが、長男の納税額875,000円、次男の納税額875,000円となります。
このケースでは配偶者の取得する割合が多いほど合計納税額が少なくなりますが、相続財産額によって「二次相続」を含めたあんぶ割合を考える必要があります。
まとめ
契約者・被保険者=夫、受取人=妻の契約で死亡保険金を受取った場合は「みなし相続財産」となり、税金は、相続税で計算されます。
ただし、死亡保険金全額が相続財産で計算されるのではなく、次のように非課税枠があります。
非課税額=500万円×法定相続人の数
この非課税額を除いた額を相続財産に加えて相続税の計算をします。
以上、「生命保険の死亡保険金を受取った場合の税金は?相続税なの?」でした。
「生命保険と相続の関連ページ」
生命保険の活用は相続対策になるの?