海外旅行に行ったときに急に具合が悪くなったり、思わぬ事故でケガをすることもあります。こんなときに国内と同じように健康保険は利用して病院で治療を受けることができるのでしょうか?
2018/12/20 11:06:20
国外でも補償される健康保険の海外療養費制度
結論から言いますと、健康保険は国内でかかった病気やケガだけを補償しているのではありません。
やむを得ず、海外旅行中や海外赴任中に急な病気やけがなどにより現地の医療機関で診療等を受けた場合は、一旦は全額自己負担する必要があります。
ですが、帰国後に加入している健康保険へ申請して一部医療費の払い戻しを受けることができます。この制度を「海外療養費制度(かいがいりょうようひせいど)」といいます。
健康保険の海外療養費制度Q&A
海外で行った治療を日本で行った場合にかかる治療費に換算し、その額から自己負担相当額(原則3割)を差し引いた金額が支給されます。
もし、実際に海外で支払った額の方が低いときはその額から自己負担相当額を差し引いた金額になります。
例えば、海外で支払った治療費治療費が20万円で、日本での算定額が15万円だとすれば、15万円に対しての7割が海外療養費とみなされますので105,000円が払い戻されます。その結果、自己負担額は15万円の3割=45,000円+(20万円-15万円)=95,000円になります。
やはり日本国内で保険適用となっていない治療は支給対象になりません。
診療内容明細書と領収明細書が必要になります。「協会けんぽ」ではパスポートの写しも必要になります
治療目的で海外に出向いた場合は支給の対象になりません。また、美容整形や歯科矯正の治療の場合も支給の対象になりません。
その場合でも海外療養費の支給対象になります。
請求できるのは、海外で医療費を支払った日の翌日から起算して2年間です。
海外療養費制度の悪用
国民健康保険の海外療養費制度を悪用する者についての記事が週刊誌に掲載されていましたのでご紹介します。
その前に外国人の国民健康保険への加入について見てみましょう。
外国人の国民健康保険制度への加入について横須賀市のホームページには下記のような記載があります。
平成24年7月9日より、住民基本台帳法の改正に伴い、今までの外国人登録制度が廃止となり、在留期間が3か月を超える外国人の方も、住民票が作成され、国民健康保険の加入対象となりました。
在留資格が「短期滞在」の方は対象外ですが、
在留期間が3か月以下でも、在留資格が「興行」、「技能実習」、「家族滞在」、「公用」、「特定活動(医療を受ける活動またはその方の日常の世話をする活動を指定されている場合を除く。)」の場合で、資料により3か月を超えて滞在すると認められる方は、加入できます。
このように外国人であっても国民健康保険に加入できますが、これを悪用して医療費をだまし取るという手口が週刊実話に掲載されています。
以下は、中国人が“食い物”にする高額がん治療のカラクリ 週刊実話の記事からの引用です。
海外療養費支給制度は、国保の加入者が海外で医療費を支払った場合、一部を加入者に返すという制度で、国保加入者の中国人が一時帰国した際に入院したかのように装って、虚偽の申請を行い、療養費をだまし取る犯罪が後を絶たないという。「このケースでは、海外の病院に確認を取るのは厄介ですし、ほとんどが現地の医師に賄賂を渡しグルになっているので、虚偽だという証明が容易ではない。だからほとんど摘発されません。(犯罪ライター)
さらに記事には、
1円も払わずがん治療を受けるカラクリとなると、裏技でもない。生活保護を受給すればいいのだ。日本に永住権を持つ中国残留孤児が呼び寄せた中国国籍の家族に生活保護を受けさせ、高額のがん治療を受けさせる。受給者は国保に加入する必要もなく、医療費は完全にタダ乗り。その数は決して少なくありません(前出・通信社記者)
確かに生活保護者の国民健康保険料は免除されます。また病院にかかっても医療費自己負担はありませんから記事にあるように医療費は1円も払わずに治療を受けることは可能です。生活保護の医療費についてはこちらのサイトをご覧ください。
記事の内容については真偽のほどは定かではありませんが、事実であるとするならば、国民医療費が猛烈な勢いで増え、それに伴い保険料負担が増えている状況を考えるととても見逃すことができない問題です。
まとめ
海外で治療を受けたときには、一旦は全額自己負担で治療費を支払います。帰国後に加入されている健康保険に申請をすれば負担した金額の一部が戻されます。
こういった制度を「海外療養費制度(かいがいりょうようひせいど)」といいます。
払戻される金額の計算方法については、海外で行った治療を日本で行った場合にかかる治療費に換算し、その額から自己負担相当額(原則3割)を差し引いた金額が支給されます。
もし、実際に海外で支払った額の方が低いときはその額から自己負担相当額を差し引いた金額になります。
以上、海外での病気やケガで治療したときに健康保険は使えるのかでした。