我が国の医療保険制度では、75歳の誕生日を迎えると他の健康保険から移り、「後期高齢者医療制度」に加入することになります。後期高齢者医療制度は、各都道府県ごとの「広域連合」という単位で運営されているため保険料は広域連合によって異なっています。

 

市町村単位で異なっているのが、国民健康保険税ですが、後期高齢者医療は、広域連合内であれば市町村は違っても基準となる所得が同じであれば保険料に変わりはありません。

 

保険料計算で関係してくるのが「均等割額と所得割率」になります。これらが各広域連合で違うため保険料に格差が生じます。その違いと保険料計算方法について解説します。

 

2017/01/26 13:36:26

後期高齢者医療の保険料はどのように計算するの?

後期高齢者医療の保険料は、家族単位ではなく、被保険者一人ひとりで計算され納めることになっています。

 

後期高齢者医療の保険料は2年ごとに見直しがされますが、今年平成29年度は、平成28年度と同じ均等割額と所得割率になります。

 

後期高齢者医療保険料の計算式

保険料計算式は、被保険者一人あたりにかかる「均等割額」と前年の所得額に基づいて計算される「所得割額」に「所得割率」を掛け、それぞれを合計した金額が納める保険料になります。

 

後期高齢者医療の保険料(年額)=均等割額+(所得割額×所得割率)

 

均等割額とは?

均等割額とは、収入や所得には関係なく、後期高齢者医療の被保険者ひとり均等にかかる保険料をいいます。東京都においては、被保険者1人当たりの均等割額は、42,400円(平成29年度)です。

 

所得割額とは?

所得割額とは、総所得金額等から33万円を差し引いた金額をいいます。
総所得金額等とは、前年中の「公的年金等収入-公的年金等控除」「給与収入-給与所得控除」「事業収入-必要経費」等の合計額で、各種所得控除前の金額です。

 

たとえば収入が年金だけの方は、均等割額の他に所得割額として
{(年金収入-公的年金等控除)-33万円(基礎控除)}×所得割率(%)
で計算されます。

 

65歳以上の公的年金等の計算方法

 

 公的年金等の収入額

 割合%

 控除額

120万円まで所得は0円

1,200,001円~3,299,999円 100% 1,200,000円
3,300,000円~4,099,999円 75% 375,000円
4,100,000円~7,699,999円 85% 785,000円
7,700,000円以上 95% 1,555,000円

例えば、公的年金収入等の合計額が200万円の方は、200万円×100%-120万円=80万円が所得になります。350万円の方は、350万円×75%-375,000円=225万円が所得になります。

 

さらにこれらの金額から33万円を差し引いた金額が「所得割額」となります。

 

保険料は軽減措置があります

後期高齢者医療の保険料は、均等割額+(所得割額×所得割率)で計算されますが、所得の低い世帯の方には、均等割額と所得割額それぞれに軽減措置が設けられています。

 

均等割額の軽減

 所得による判定基準

 軽減割合

33万円以下でかつ、世帯の被保険者全員が年金収入80万円以下(その他各種所得がない)  90%軽減

 33万円を超えない世帯
※9割軽減に該当する方は除く

 85%軽減
 33万円+(26.5万円×被保険者の数)以下  50%軽減
 33万円+(48万円×被保険者の数)以下  20%軽減

※65歳以上で公的年金収入のある方は、年金所得から特別控除額15万円を控除して計算します。
たとえば、年金収入168万円の1人世帯では、168万円(年金収入)- 120万円 (公的年金等控除額)- 15万円(特別控除額)=33万円となります。

 

よって33万円を超えない世帯※9割軽減に該当する方は除くに該当しますので均等割額については85%軽減されます。

 

所得割額の軽減

広域連合によって軽減措置が違う場合がありますが、調べた限りにおいては、所得金額が58万円(年金収入のみの場合211万円)以下の方は、所得割額が5割軽減となっていました

 

ただし、東京においては上記以外の軽減に加え、所得が15万円以下の場合には、100%軽減(公的年金収入のみならば168万円以下)、所得が20万円以下の場合には、75%軽減(公的年金収入のみならば173万円以下)されます。

広域連合別の均等割額と所得割率

後期高齢者医療広域連合によって平成28・29年度の均等割額、所得割率がどのくらい異なっているのか表にしてみました。

 

関東

関東

 均等割額

所得割率 

 東京  42,400円  9.07%
 埼玉  42,070円  8.34%
 千葉  40,400円  7.93%
 神奈川  43,429円  8.66%
 茨城  39,500円  8.00%
 栃木  43,200円  8.54%
 群馬  43,600円  8.60%
 山梨  40,490円  7.86%

北海道・東北

 北海道・東北

 均等割額

所得割率 

北海道  49,809円  10.51%
青森  40,514円  7.41%
岩手  38,000円  7.36%
宮城  42,480円  8.54%
秋田  39,710円  8.07%
山形  41,700円  8.58%
福島  41,700円  8.19%

 

信越・北陸

 信越・北陸

均等割額 

所得割率 

 新潟 35,300円 7.15%
 長野 40,907円 8.30%
 富山 43,800円 8.60%
 石川 47,520円 9.33%
 福井 43,700円 7.90%

 

 

 

東海・近畿

 東海・近畿

均等割額

所得割率

 岐阜  42,690円  8.55%
 静岡  39,500円  7.85%
 愛知  46,984円  9.54%
 三重  43,870円  9.06%
 滋賀  45,242円  8.94%
 京都  48,220円  9.61%
 大阪  51,649円  10.41%
 兵庫  48,297円  10.17%
 奈良  44,800円  8.92%
 和歌山  44,177円  8.93%

 

中国・四国

 中国・四国

均等割額 

所得割率 

 鳥取  42,480円  8.07%
 島根  45,840円  9.28%
 岡山  49,200円  9.87%
 広島  44,795円  8.97%
 山口  52,390円  10.52%
 徳島  52,913円  10.98%
 香川  47,300円  9.26%
 愛媛  46,308円  9.16%
 高知  54,394円  11.42%

 

九州・沖縄

 九州・沖縄

均等割額 

所得割率 

 福岡 56,085円 11.17%
 佐賀 51,800円 9.88%
 長崎 46,800円 8.8%
 熊本 47,900円 9.26%
 大分 48,500円 9.52%
 宮崎 48,400円 9.08%
 鹿児島 51,500円 9.97%
 沖縄 48,440円 8.80%

以上の結果を見ますと、平成28・29年度の均等割額で一番高いところは、福岡県の56,085円です。所得割率では、高知の11.42%です。

 

逆に均等割額で一番安いのは、新潟県の35,300円、所得割率でもやはり新潟県の7.15%でした。高いところと比較してみますと、均等割額では20,785円の差があり、所得割率では、4.27%ありました。

後期高齢者医療の保険料を比較してみました

所得は同じであっても広域連合によって保険料は違ってくるということはお伝えしました。
それでは所得によってどう違ってくるのか北海道と東京で比較してみました。

 

ケース1:ご夫婦ともに年金収入80万円の場合

まずは北海道にお住まいの方の計算からです。

 

北海道にお住まいのAご夫妻の場合

北海道後期高齢者医療広域連合では、平成28・29年度の均等割額は49,809円、所得割10.51%です。

 

まず、夫の均等割額の保険料を試算します。

 

49,809円×1人=49,809円
ただしこの場合には、他に所得がなく年金収入80万円ですので、均等割額の軽減が90%適用になります。

 

そのため、49,089円×(1-0.9)=4,908円 百円未満切り捨て→ 4,900円

 

次に夫の所得割額を計算します。

 

公的年金の収入は、0円~1,199,999円まで公的年金所得は0円になりますから、所得割額はありません。

 

妻の均等割額を計算します。

 

夫と同様に49,809円×1人=49,809円
この場合も、他に所得がなく年金収入80万円ですので、均等割額の軽減が90%適用になります。
ですので、49,089円×(1-0.9)=4,908円 百円未満切り捨て→ 4,900円

 

所得割額も夫と同様、0円です。

 

よって、A夫婦の年間保険料は、4,900円+4,900円=9,800円(年間)となります。

 

東京にお住まいのBご夫妻の場合

東京都後期高齢者医療広域連合では、平成28・29年度の保険料率を均等割42,400円、所得割率9.07%です。

 

まず、夫の均等割額の保険料を試算します。

 

42,400円×1人=42400円
ただしこの場合には、他に所得がなく年金収入80万円ですので、均等割額の軽減が90%適用になります。
そのため、42,400円×(1-0.9)=4,240円 百円未満切り捨て→ 4,200円

 

次に夫の所得割額を計算します。

 

公的年金の収入は、0円~1,199,999円まで公的年金所得は0円になりますから、所得割額はありません。

 

妻の均等割額を計算します。

 

夫と同様に42,400円×1人=42,400円
この場合も、他に所得がなく年金収入80万円ですので、均等割額の軽減が90%適用になります。
ですので、42,400円×(1-0.9)=4,240円 百円未満切り捨て→ 4,200円

 

所得割額も夫と同様、0円です。

 

よって、B夫婦の年間保険料は、4,200円+4,200円=8,400円となります。

 

ケース2:夫の年金収入300万円妻の年金収入100万円の場合

先ほどのケースとは違い年金収入が多い場合の比較です。

 

北海道にお住まいのCご夫妻の場合

北海道後期高齢者医療広域連合では、平成28・29年度の均等割額は49,809円、所得割10.51%です。

 

まず、夫の均等割額の保険料を試算します。

 

49,089円×1人=49,809円(均等割額)

 

次に所得割額を計算します。
まずは、公的年金の所得を算出します。
公的年金簡易計算表から300万円-120万円=180万円(総所得)
180万円-33万円(基礎控除)=147万円
147万円×10.51%=154,497円(所得割額)

 

よって、夫の年間保険料は、49,809円+154,497円=204,300円(百円未満切捨て)・・・①

 

妻の均等割額を計算します。
49,089円×1人=49,809円(均等割額)

 

妻の所得割額を計算します。

 

公的年金1,199,999円を超えていませんから年金所得は0円で、所得割額はありません。
よって、妻の年間保険料は・・・49,809円ですが、百円未満切り捨てしますので49,800円です。

 

Cご夫妻の世帯全体の年間保険料は、①+②=204,300円+49,800円=254,100円です。

 

東京にお住まいのDご夫妻の場合

東京都後期高齢者医療広域連合では、平成28・29年度の保険料率を均等割42,400円、所得割率9.07%です。

 

まず、夫の均等割額の保険料を試算します。

 

42,400円×1人=42,400円(均等割額)

 

次に所得割額を計算します。
まずは、公的年金の所得を算出します。
公的年金簡易計算表から300万円-120万円=180万円(総所得)
180万円-33万円(基礎控除)=147万円

 

147万円×9.07%=133,329円

 

よって夫の年間保険料は、42,400円+133,329円=175,729円 ・・・①

 

妻の均等割額を計算します。

 

夫と同様に42,400円×1人=42,400円(均等割額)
公的年金1,199,999円を超えていませんから年金所得は0円で、所得割額はありません。

 

妻の年間保険料は、42,400円・・・②

 

D世帯全体の年間保険料は、
①+②=175,729円+42,400円=218,100円(百円未満切捨て)です。

 

以上の結果を表にまとめてみました。
年間保険料です。

 公的年金収入

北海道

東京 

 夫婦とも年金収入80万円

 9,800円

8,400円

夫300万円、妻100万円

254,100円

218,100円

 

ちなみに福岡広域連合では、公的年金のみの収入で夫300万円、妻100万円であるならば、夫の保険料=均等割56,085円+所得割164,199円=220,280円(十円未満切り捨て)。妻の保険料=均等割56,085円⇒十円未満切捨て56,080円。

 

世帯全体では、220,280円+56,080円=276,360円になります。

公的年金収入 

福岡

 

夫300万円、妻100万円

 276,360円

広域連合によってこのような差が生じます。

まとめ

後期高齢者医療の保険料の計算は、下記の式で行います。

後期高齢者医療の保険料(年額)=均等割額+(所得割額×所得割率)

均等割額とは、収入や所得には関係なく、後期高齢者医療の被保険者ひとり均等にかかる保険料であり、所得割額とは、総所得金額等から33万円を差し引いた金額をいいます。

 

後期高齢者医療の保険料は、広域連合によって異なっています。
平成28・29年度の均等割額で一番高いところは、福岡県の56,085円です。所得割率では、高知の11.42%です。

 

逆に均等割額で一番安いのは、新潟県の35,300円、所得割率でもやはり新潟県の7.15%でした。高いところと比較してみますと、均等割額では20,785円の差があり、所得割率では、4.27%ありました。

 

以上、「後期高齢者の保険料をわかりやすく解説」でした。
〈関連ページ〉
後期高齢者の高額医療(療養)費、どのように計算するの?

 

該当カテゴリー:健康保険
関連カテゴリー:雇用保険(失業保険)労災保険生命保険