傷病手当金についての統計。資格要件や受給期間、必要書類。その申請方法と手順について解説します。

 

 

 

 

2015/07/14 13:48:14

傷病手当金について

まずは、傷病手当金とはどういう手当なのかについて説明します。

 

傷病手当金とは、業務外の病気や通勤途上以外のケガで4日以上仕事を休んだときに健康保険から支給されるものです。
病気やケガで歩くこともままならず、長期間自宅療養や入院等で仕事に行けないということがあります。このような場合、やはり心配になるのは収入面になります。

 

会社だって、仕事を休めばその分の給料を支払ってくれません。そこで給料と同額というわけにはいきませんが傷病手当金が役立つというわけです。

 

この手当と混同しやすいのが、業務上のケガや病気の場合に労災保険保険から支給される休業補償給付や休業給付です。業務外と業務上という点に違いがあります。労災保険保険の休業補償給付の詳細についてはこちらのページをご覧ください。

 

では、受給するにはどういう要件を満たしている必要があるのか見てみましょう。
次の項目をご覧ください。

 

受給資格要件にはなにがある?

下の要件すべてに該当する必要があります。

 

  • 病気・けがのためでの療養中のとき
  • 療養のために仕事につけなかったとき
  • 連続3日以上休んだとき
  • 続けて休んだ場合の4日目から支給されます。
  • 初めの3日間は「待期期間」といい、支給されません。
  • 給料等をもらえないとき
  • 業務上・通勤災害によるもの以外

というような条件がありますが、たとえ給料を受け取っても、傷病手当金よりもその額が少ないときは、その差額が傷病手当金として支給されます。

 

傷病手当金の統計

「出典:全国健康保険協会管掌健康保険による傷病手当金受給者状況」
平成25年10月の全員を対象とした傷病手当金の受給状況によりますと1 件当たりの受給日数平均は 32.62 日で、男女別にみると、男性が 32.06 日、女性が 33.46 日となっていて、女性の方が長くなっているのが特長です。

 

支給日数別の件数割合をみると、30 日(16.53%)、31 日(27.88%)の割合が高くなっていて、この両日で 4 割弱を占めています。61日以上は10.28%ほどになります。

 

また5歳刻みの年齢階級別支給件数では、50歳未満は支給件数の割合は低いですが、50歳以上から高くなり、55歳から64歳では大幅に高くなっています。

 

疾患別では、精神及び行動の障害が25.67%(男女平均)を占めており、次いで癌が20.40%、循環器系疾患11.54%、筋骨格系及び結合組織の疾患 11.14%となっています。

傷病手当金はいくら受け取れるの?計算方法について

傷病手当金がどのくらい受け取れるのかの計算方法について見てみましょう。

 

※平成28年4月に次のように改正が行われています。

 

1日当たりの支給額=支給開始以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

 

もしも12カ月に満たない場合には、「支給開始日の月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額」か「28万円(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額)」を比較して少ないほうを採用します。

 

傷病手当金の計算事例

支給開始以前に12ヵ月の標準報酬月額がある場合で、6か月間は標準報酬月額30万円、後半6カ月間は35万円とした場合の計算です。

 

まずは標準報酬月額の平均を求めます。

 

(30万円×6ヶ月+35万円×6ヵ月)÷12ヵ月=325,000円 ←標準報酬月額の平均

 

次に、標準報酬月額を30日で割って1日あたりに直します。

 

325,000円÷30日=10,833円←1日あたりの標準報酬額

 

この時点で1の位を四捨五入します。この場合は、10,830円になります。

 

最後に10,830円に2/3を掛けます。(このときに小数点以下があれば小数点第1位を四捨五入します。)

 

10,830円×2/3=7,220円

 

この事例では、7,220円が傷病手当金の1日あたりの支給額になります。

 

この方が病気で休みだしてから4日目以降で90日休業した場合には、7,220円×90日=6649,800円が支給されることになります。

 

傷病手当金が受取れる期間について

傷病手当金はどのくらいの期間受け取れるのか見てみましょう。

 

傷病手当金は最長1年6ヶ月間受取ることができます。
仕事に復帰して、また同じ病気やケガで仕事を休んだら支給されますが、ただし、前回仕事に就けなくて傷病手当金が支給開始になった日から数え、1年6ヶ月を超えてしまった場合には、不支給となってしまいます。下記の図をご覧ください。

 

傷病手当金について

 

 

障害年金と併給はできるの?

出産手当金や障害年金との併給について見てみましょう。
次のケースをご覧ください。

 

 

傷病手当金と出産手当金を同時に受けられる場合は、出産手当金の支給が優先されます。
出産手当金の支給期間中、傷病手当金は支給されませんでしたが、平成28年4月から傷病手当金の額が出産手当金よりも多ければその差額が支給されるようになりました。


 

 

同じ病気やケガで障害厚生年金を受けることになったときは、傷病手当金は支給されません。たとえ、傷病手当金の期間が残っていてもです。但し、受給額が傷病手当金等の額を下回るときは、その差額が支給されます。厚生年金や老齢基礎年金又は退職共済年金についても併給の考え方は同じです。


 

退職との関係はどうなっているのでしょうか

傷病手当金を受給していて退職するとどうなるのか見てみましょう。
たとえば、欠勤していて、そのまま退職したら傷病手当金はどなってしまうのでしょうか?
このような場合には、退職するまでに1年以上健康保険に加入期間があり、傷病手当金を受給している場合は、引き続き支給されます。また、受給していなくても、受給資格を満たしていれば、同様に支給を受けることはできます。

任意継続期間中はどうなるの?

任意継続期間中はどうなるのか見てみましょう。
任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。
ただし、退職するまでに1年以上健康保険に加入期間があり、任意継続になる前に働いていた期間中に発生した病気やケガの傷病手当金は引き続き受給することは可能です。

 

傷病手当金の申請手続について

傷病手当金申請書は、記入したら事業主の証明が必須のため事業主に提出します。
事業主から健康保険組合や協会けんぽに提出する流れとなります。

 

必要書類は下記からダウンロードできます

 

協会けんぽにご加入の方はこちらから書類がダウンロードできます
協会けんぽの傷病手当金の申請書記入例はこちら

 

はけんけんぽ(人材派遣健康保険組合)はこちら

 

★その他健康保険組合については、各自加入のホームページや職場から入手してください。

延長傷病手当付加金とはなんのこと

健康保険組合の中には、傷病手当金支給期間である1年6ヶ月を過ぎても病気やけがが治らず、引き続き会社を休んで給与の支払いがない場合には、延長傷病手当付加金がさらに1年6か月の間受けられる制度を独自にもうけているところがあります。
これを延長傷病手当付加金といいます。

 

まとめ

業務外の病気やケガで4日以上仕事を休んだ時に健康保険から支払われるものが傷病手当金になります。

 

標準報酬月額が12ヵ月以上ある場合には以下の計算式になります。

 

1日当たりの支給額=支給開始以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3

 

受取れる期間は最長1年6ヶ月になり、出産手当金や障害厚生年金との併給はできません。また任意継続期間中に発生した病気やケガの場合は傷病手当金の受給資格はありません。

 

以上、「傷病手当金の支給額についての計算方法はご存じですか?」についての解説でした。

 

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