健康保険料の計算についての解説をまとめましたのでぜひご観覧くださいませ。
まず初めに例えとして、病院や歯医者にかかったときの医療費の支払は自身3割負担です。
なので、たくさんの医療費を使ったときには皆様このときにはありがたいと感じていると思います。
その反面、病院や歯医者にもかからない日が数年続くと無駄に支払っている気がしませんか。
保険は相互扶助{(そうごふじょ)とは、会員や構成員同士が互いに助け合うこと }なので致し方ないとはいえ、健康保険を使わないのが1年でもあればわずかでもその月分を1年間まとめてネットやコンビニで使えるポイント還元でもしてくれればいいのになんて思ったりします。きっとポイントざっくざくですよ。
……ジョークはさておき(ジョークになっているかはさだかではない)、ご承知の通り、健康保険料は年金と同じ社会保険料なので給料から強制的に差引かれてしまいます。嫌ですねぇ。
支払う健康保険料は、標準報酬月額や標準賞与額によって決まりますが、これらはどういったものか、また、加入している健康保険によって保険料率がどのくらい違っているのか。その内容や違い、計算方法について解説します。
※こちらのページは、会社勤めの方の健康保険料の計算についての解説です。
自営業などの方の国民健康保険料の計算方法についてはこちらの国民健康保険料の計算をわかりやすく解説していますをご覧ください。
2017/04/23 19:54:23
健康保険の種類
こちらの記事でも健康保険の種類についてご紹介していますが、まずは、あらためて簡単にご紹介致します。
健康保険は、各種健康保険組合、協会けんぽ、各種共済組合、国民健康保険(国民健康保険組合含む)、後期高齢者医療制度などの種類があります。
つまり、たくさんあります。
この中で会社からお給料をもらい、健康保険料が差し引かれているサラリーマンの方等が加入されているのは『協会けんぽや健康保険組合』、公務員の方は『共済組合』になります。
つまり、勤める会社によってそれぞれ加入する健康保険は異なってくるのです。
健康保険が異なるということは、保険料率も異なってきます。さらに保険料率が同じでも健康保険組合によっては事業主負担が多かったりするところもあります。
よって、給料(標準報酬月額)が同じでも加入するところの”健康保険によって健康保険料や給付される付加給付は違ってくる”ことになります。
→付加給付とは、法定給付とは別に健康保険組合が独自に定めている制度です。協会けんぽや国民健康保険にはありません。
例えば、1ヵ月の医療費が100万円。
年収約370~約770万円の方は高額療養費により病院に支払う医療費の限度額は、87,430円になります。⇒これを法定給付といいます。
ですが、別途、付加給付を「1人1ヶ月の医療費の自己負担限度額は25,000円」と定めている健康保険組合ならば、87,430円-25,000円=62,430円 ← この62,430円が還付されます。
付加給付とは、通常の給付金に加えて、独自に支給する給付金です。健康保険組合が独自に定めていて、出産育児一時金付加金、訪問看護療養費付加金、傷病手当金付加金などがあります。
月あたりの医療費が25,000円です。なので、差額ベット代等の自己負担はありますが、民間医療保険などはほぼ不要ともいえます。
細かい説明はさておき、法定給付がある健康保険は、それだけ自己負担が少なくてすむとおぼえておいてください。
健康保険料の計算はどうなっているの?
健康保険料とひとくちでいっても、各組織で保険料率が違うので、おのずと保険料は違ってきます。
なので、計算方法も違ってくることをご理解願います。
サラリーマンなどの方
では、サラリーマンの健康保険について。
サラリーマンの方等が加入する健康保険の主な組織には『全国健康保険協会(協会けんぽ)』と『健康保険組合連合会』という2つの組織があります。
この点は先ほど説明した通りです。
協会けんぽとは、中小企業等で働く従業員やその家族が加入されている健康保険です。
前身は、政府管掌健康保険といって、国(社会保険庁)で運営していましたが、平成20年10月1日に新たに全国健康保険協会が設立され、以降協会が運営しています。
協会けんぽについては、会社がある各都道府県によって保険料率が違う。これが特長です。
健康保険組合連合会に加入している健康保険組合については、これまた各組合によって保険料に差があります。たとえば、NTT健康保険組合とかトヨタ健康保険組合などの各組合ごとで異なっています。
どちらにも共通していることは、39歳までは、健康保険料だけですが、40歳以上になると介護保険料も加わって天引きされる点です。ですので、40歳から負担が増えるということもぜひ知っておいてください。
そして、健康保険料を計算する上で標準報酬月額や標準賞与額が基になってきますので、まずはこれらについて説明いたします。
※説明に説明を重ねなければならないため心苦しいのですが、しばしお付き合いくださいませ!
※2003年3月までのボーナスについては健康保険料の対象外だったため保険料は差引かれませんでしたが、4月以降からは総報酬制となり、ボーナスも計算に含まれるようになりました。
標準報酬月額とは
標準報酬月額は、基本給(月給・週給・日給など)、残業手当、勤務手当、役職手当、家族手当、日直手当、宿直手当、勤務地手当、通勤手当、住宅手当、休業手当、賞与(年4回以上)など、被保険者が労務の対償として受けるものすべてが対象になります。
また、宿舎費や食事代等の現物給与も含まれます。
※標準報酬月額に含まれないものとしては、大入袋、見舞金、出張旅費などがあります。
標準報酬月額の等級区分
上記の手当を含めた標準報酬月額は、区切りのよい幅で等級区分されています。
等級は、健康保険においては、第1級の5万8千円から第50級の139万円までの全50等級に区分されています。細かいですねぇ。
下の画像は、標準報酬月額の等級を一部抜粋したものです。左の赤枠が等級区分です。
標準報酬月額は何月の給料が対象になるのか
毎月支払われる給料といっても、月によって残業時間が異なったりして変動がある方もたくさんおられるでしょう。
そのために標準報酬月額は、4月、5月、6月の報酬月額を基に毎年9月に標準報酬月額が決定されています。これを”定時決定”といいます。なお、支払基礎日数に17日未満の月がある場合には、その月を除いて決定します。
つまり、4月、5月、6月の報酬月額を基に算定されるので、7月以降の残業代が多くても翌年の8月まで健康保険料や年金保険料など社会保険料は”変わりません”
ただし、基本給が標準報酬月額の2等級以上変動があった場合には、計算しなおされます。これを”随時改定”といいます。
では、年4回以下のボーナス(賞与)はどうなるのでしょうか?
年4回以下のボーナスは、標準賞与額として適用され、標準報酬月額の料率と同じものが適用されます。
標準賞与額は、実際に支給された賞与額から千円未満を切り捨てた額となっています。
ただし上限額が定められています。
健康保険については年間累計額573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額)。厚生年金保険については1ヶ月あたり150万円が上限となっています。
以下は、協会けんぽと健康保険組合の保険料率がどのようになっているのかの詳細です。
協会けんぽの健康保険料はどうなっている?
協会けんぽは、都道府県ごとに健康保険料の計算に使う一般保険料率を定めています。
一般保険料率は、基本保険料率と特定保険料率という内訳です。
基本保険料率は、主に加入者である被保険者や被扶養者(家族)の給付等に使われる保険料の財源になり、特定保険料率は、後期高齢者支援金等に充てられます。
平成28年3月分からの協会けんぽの一般保険料率は全国平均10%。
協会けんぽの健康保険料の計算方法
協会けんぽの健康保険料の計算方法は、
健康保険料=標準報酬月額×保険料率÷2
被保険者の保険料負担額は、事業主と折半となるため÷2。
協会けんぽの保険料率は、先ほども述べましたように都道府県ごとに料率が違います。
都道府県の判断は、基本的には会社の所在地(健康保険適用事業所の届出を行っている場所)の属する「協会けんぽ都道府県支部」によっての保険料率となっています。
以下は、北海道と東京都の保険料率の違いです。
〈平成29年度4月納付分からの健康保険料率〉
地域 |
健康保険料率 |
介護保険料率 |
合計 |
---|---|---|---|
北海道 |
10.22% |
1.65% |
11.87% |
東京都 |
9.91% |
1.65% |
11.56% |
※ 健康保険・介護保険料率には、事業者負担分が半分含まれています。
以下は、上記の表から保険料を計算してみたものです。
協会けんぽの健康保険料の計算事例
上記の説明では「なんじゃこりゃ」と頭上にハテナが浮かぶかと思いますので、一例を上げることにいたしましょう。
平成27年度の料率での計算事例をご覧ください。
計算事例1)
東京都支部に属している39歳、標準報酬月額が30万円の場合。
平成27年4月分(5月納付分)からの保険料を計算してみます。
この場合、保険料率は介護保険第2号被保険者に該当しないため9.97%です。
上記の計算式から、
30万円×9.97%÷2=14,955円
計算事例2)
北海道支部に属している39歳、標準報酬月額が30万円の場合
平成27年4月分(5月納付分)からの保険料を計算してみます。
この場合、保険料率は介護保険第2号被保険者に該当しないため10.14%。
上記の計算式から、
30万円×10.14%÷2=15,210円
計算事例3)
東京都支部に属している40歳。
標準報酬月額が30万円の方の平成27年4月分(5月納付分)からの保険料を計算してみます。
この場合、保険料率は介護保険第2号被保険者に該当するため11.55%。
上記の計算式から、
30万円×11.55%÷2=17,325円
計算事例4)
北海道支部に属している40歳、標準報酬月額が30万円の方の平成27年4月分(5月納付分)からの保険料。
この場合、保険料率は介護保険第2号被保険者に該当するため11.72%。
上記の計算式から、
30万円×11.72%÷2=17,580円
以上の結果から、給料(標準報酬月額)が同じでも、40歳になると介護保険料が加わるので、その分高くなるのがお分かりただけたかと思います。
ボーナス(賞与)も健康保険料は天引きされる
上記は月額給料での健康保険料についての話でしたが、ボーナスでも健康保険料の負担はあります。ボーナスにもかかってしまうのかよふざけるな……と言いたくなるかもしれません。言いたくなりますね。
保険料率は、毎月の給与と同じになりますが、以下ように計算が違ってきます。
賞与に係る保険料額は、賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額(標準賞与額)に、保険料率を乗じた額です。
また、標準賞与額の上限は、健康保険は年間573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額)となります。
たとえば、東京都支部に属している40歳未満の方のボーナスが、256,300円だとしましょう。
この方の場合、「賞与は1,000円未満の端数を切り捨てた額」とするため、256,000円を元に計算します。
この金額に保険料率9.97%を掛けます。
256,000円×9.97%÷2=12,761円60銭→12,762円
端数は「被保険者負担分の端数が50銭以下の場合は切り捨て、50銭を超える場合は切り上げて1円となります」ので、切り上げ処理をしています。
協会けんぽの健康保険料についてのQ&A
A.いいえ。加入した月は1ヶ月分の保険料になります。ですから5月28日に加入しても5月分の保険料は1ヶ月分必要です。
退職の場合は、健康保険の加入資格を喪失した日(退職日の翌日)の属する月の前月まで、月を単位に計算されます。
就職したとき(資格取得時決定)は初任給を基礎にして決め、それ以外は、定時決定と言い、毎年、4月、5月、6月の給料等をもとに7月1日現在で決め直され、その年の9月1日から翌年8月31日までの1年間使われます。
賞与の健康保険料は、標準賞与額×健康保険料率となります。介護保険料は、標準賞与額×介護保険料率となっています。
※賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた額(標準賞与額)に「保険料率」を乗じた額です。
健康保険組合の保険料はどうなっているの?
健康保険組合でも、協会けんぽと同じように標準報酬月額に保険料率を乗じたものが保険料となりますが、保険料率は各健康保険組合で独自に設定できます。
さらには、被保険者負担と事業主負担の割合も独自設定が可能です。
組合の健康保険料は、
一般保険料(基本保険料+特定保険料)+調整保険料
調整保険料とは、全国の健康保険組合は、高額医療費の共同負担事業と財政窮迫組合の助成事業(財政調整)を共同して行っており、この財源にあてるために調整保険料を拠出しています。この保険料率は、基本調整保険料率1000分の1.3に、その組合の財政に応じた若干の増減率(修正率)を乗じて決められます。
特定保険料とは、高齢者医療制度等への支援金に使われる保険料をいい、一般保険料に含まれています。
平成26年度の各健康保険組合の料率比較
|
東京都土木建築 |
富士フィルムグループ |
トヨタ自動車 |
NTT |
関東ITソフトウエア |
健康保険被保険者負担分 | 48/1000 |
35.9/1000 |
30/1000 |
45.6/1000 |
42.5/1000 |
健康保険事業主負担分 | 48/1000 |
50.1/1000 |
53/1000 |
47.1/1000 |
42.5/1000 |
健康保険合計 | 96/1000 |
86/1000 |
83/1000 |
92.7/1000 |
85/1000 |
介護保険被保険者負担分 | 6.5/1000 |
6/1000 |
5.4/1000 |
7.8/1000 |
6/1000 |
介護保険事業主負担分 | 6.5/1000 |
6/1000 |
5.4/1000 |
7.8/1000 |
6/1000 |
介護保険合計 | 13/1000 |
12/1000 |
10.8/1000 |
15.6/1000 |
12/1000 |
東京都土木建築健康保険
こちらお勤め(40歳未満)で標準報酬月額を30万円とすると、保険料は、30万円×48/1000=14,400円になります。年齢が40歳以上ならば介護保険料も加わるので16,350円となります。
トヨタ自動車健康保険組合
こちらにお勤め(40歳未満)で標準報酬月額を30万円とすると、保険料は、30万円×30/1000=9,000円になります。年齢が40歳以上ならば介護保険料も加わるので10,620円となります。
健康保険料の会社負担はそれぞれで違う
通常は、事業主と被保険者で折半となりますが、上記健康保険組合のように組合によって異なっているところもあります。
トヨタ自動車においては、83/1000のうち、事業主負担が53/1000となっていますから約64%、被保険者負担は残り36%です。ん〜〜〜なんともうらやましい限りです。
健康保険料の免除はあるの?
国民健康保険は、失業等で収入がない場合には減額がありますが、健康保険には免除はありません。
国民健康保険の減額や免除については以下の通りですが、市区町村によって異なります。
国民健康保険料の免除される方
以下のことにより、生活困窮により保険料が納付できない場合には申請する必要がありますが、減免を受けられる場合があります。
- 災害(震災、火災、水害など)で、その資産に重大な損害を受けた
- 納税義務者の死亡または障害により収入が皆無または著しく減少して生活困窮となった
- 納税義務者の失職または廃業で、収入が皆無または著しく減少して生活困窮となった
- 納税義務者・扶養家族の疾病・負傷で、収入の減少・医療費負担の増加があった
国民健康保険料の減額
前年所得が一定基準額に満たない場合は、減額されます。なおこちらの減額については申請がいりません。
世帯主と被保険者全員の前年中の総所得金額によって、均等割の保険料を7割、5割、2割減額されます。
それぞれの割合については、基準所得金額が各市区町村によって異なりますので、お住いの市区町村のホームページにてご確認ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
健康保険料の計算といっても、健康保険によって料率は違ってきますので、一律で計算はできません。それがおわかりいただけたと思います。
協会けんぽでは各都道府県で違っていますし、健康保険組合連合会に加入している健康保険組合においても、それぞれが独自に保険料率を決定しているのがその理由です。
また、健康保険料の計算にあたり、39歳までは、介護保険料の負担がないため、40歳以上とは異なる料率になります。
協会けんぽの健康保険料=標準報酬月額×保険料率÷2で計算しますが、健康保険組合の健康保険料については、必ずしも折半ではなく、事業主負担を多くしている組合もあります。
少々ややこしい部分はありますが、以上、「健康保険料の計算の仕組みについて学ぼう!」でした。
該当カテゴリー:健康保険
関連カテゴリー:雇用保険(失業保険)、労災保険、生命保険