国民健康保険加入者や健康保険(被用者保険)に加入されている方(被保険者)や配偶者(被扶養者)などが満70歳になる。そこで高齢受給者証が郵送されてきたり職場にて交付されるのが一般的です。
では、どのような理由があって交付されるのでしょうか。また70歳になってから病院を受診しときの自己負担割合はどうなるのかについて詳しく解説します。
2018/09/21 11:52:21
高齢受給者証とは?国保と健保では違うの?問題点とは
高齢受給者証とは、70歳以上で75歳未満の人が医療機関で支払う医療費の自己負担金の割合(一部負担金)を示す証明書のことをいいます。ですから健康保険証ではありません。
有効期限は、1年間です。
国民健康保険高齢受給者証は、全ての市町村が、8月1日から翌年の7月31日までを有効期限としています。
高齢受給者証には、自己負担割合1割から3割までのいずれかが明示されていますので、医療機関の窓口ではこの割合から計算した医療費が請求されます。
手続きは必要?
上でもふれましたが、高齢受給者証が利用できるようになりますと所得によってですが、自己負担割合が3割から2割に変わります。
また自己負担限度額においても70歳未満の人の合算できる金額は、21,000円以上のものに限られますが70歳以上の人は自己負担額をすべて合算できるようになります。
こういったように変更がありますが、保険者に対して自ら手続きする必要はありません。
70歳以上で75歳未満の年齢の間に該当する人であっても一定程度の障害の状態に該当される場合は後期高齢者医療制度の対象者になりますので高齢受給者証は交付されません。
国保と健保で高齢受給者証の違う点
国民健康保険加入者は、国民健康保険高齢受給者証という名称ですが、健康保険加入者は健康保険高齢受給者証です。
70歳になれば国民健康保険加入者は役所から郵送されてきます。
健康保険加入者は職場を通じて交付されますが、任意継続被保険者については郵送となります。
いずれも保険者が行うので自らの手続きは不要です。
受診するときに高齢受給者証を忘れたら
医療機関を受診するときは、国民健康保険または健康保険証の他に「高齢受給者証」の2枚を提示する必要があります。
忘れたなどで提示がないと2割負担の人でも3割負担をしなくてはなりません。ただし、国保の場合は担当窓口、協会けんぽや健康保険組合は職場あるいは事務センターに申請して認められれば、のちに差額が支給されます。
高齢受給者証の問題点
70歳以上75歳未満の人が医療機関を受診する際には窓口に健康保険証と一緒に高齢受給者証を提出しなければなりません。
しかしながら市町村によっては、カードサイズの被保険者証と別にはがきサイズの高齢受給者証を交付していて携帯に不便という意見が行政機関に寄せられています。
そこで総務省行政評価局は、国民健康保険における被保険者証と高齢受給者証の一体化の推進を厚生労働省にあっせんしました。
高齢受給者証の負担割合の判定はどうなっているの?
未就学児の医療費の自己負担割合は原則2割です。そして、それ以上の年齢で70歳未満の人は3割です。しかし70歳以上になるとこの割合は1割~3割のいずれかに区分されます。
では、高齢受給者証ではどのように区分判定がなされているのでしょうか。
※ 75歳以上になりますと、被保険者(被扶養者)の一部負担金の割合は2割になります。
では、現役並みの所得者とはどのような人が該当するのでしょうか。
現役並みの所得者とは
ポイントして現役並みの所得とは、国民健康保険と健康保険では判定基礎が違っています。
まず国民健康保険においては、前年の所得での判定となりますが、健康保険では、毎月受取るお給料から換算される標準報酬月額で判定されるという点をおさえおきましょう。
現役並み所得者の違い | |
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国民健康保険(70歳以上75歳未満)加入者 |
世帯に前年度住民税課税所得※が145万円以上の70~74歳の人がいない場合は、2割負担です。 |
健康保険(70歳以上75歳未満)加入者 |
標準報酬月額が28万円未満の人は2割負担。 |
住民税課税所得とは、所得額(収入-必要経費)から所得控除を差し引いた後の金額をいいます。
3割と判定されても2割負担になる場合がある
上記表で3割負担と判定された人でも収入額が一定の基準に満たない場合は、申請により、2割負担(平成26年4月1日までに70歳になられた人は1割)になります。
該当するのは、下のアイウにいずれかに該当する人。
ア ) 70歳以上の被保険者の方
イ ) 70歳以上の被保険者に扶養されている70歳以上の被扶養者の方
ウ ) 70歳以上の被扶養者はいないが70歳以上の被保険者で後期高齢医療制度の被保険者がいる方
そして、下に示した収入額に満たなければ申請により2割もしくは1割負担になります。
- 70歳以上の被扶養者がいない場合 : 383万円未満 (被保険者のみの収入額)
- 70歳以上の被扶養者がいる場合 : 520万円未満 (被保険者と被扶養者の合計収入額)
- 「後期高齢医療制度の被保険者がいる場合 : 520万円未満 (被保険者と後期高齢医療制度の被保険者の合計収入額) 」
ここでいう収入額とは?
収入額とは、必要経費や各種控除を差し引く前の金額で下に示した項目の合計金額をいいます。
- 給料は、源泉徴収票などの「支払金額」欄の金額
- 年金は、公的年金等の源泉徴収票などの「支払金額」欄の金額
- 営業の場合は「売上」
- 不動産の場合は家賃等の「総収入金額」
- 株の譲渡の場合は「売却金額」
- 土地・建物などの売却金額
高齢受給者基準収入額適用申請書を使う
国民健康保険加入者は、高齢受給者基準収入額適用申請書が7月中には郵送されてきますのでそちらを使います。
協会けんぽは、毎年7月中旬頃に事業主や担当部署を通じて案内があります。任意継続者は郵送により案内されます。提出期限は、高齢受給者証の交付日より14日以内となっています。
高齢受給者証はいつから使えるのですか?
先ほど70歳になったら高齢受給者証が交付(郵送)されると説明しましたが、実際にはいつから使用できるのでしょうか。
交付時期と使用開始日のタイミングは次のようになっています。
被保険者及び被扶養者が70歳になったら、70歳の誕生月に交付(郵送)されます。使用開始できるのは70歳の誕生日の翌月の1日からです。ただし、誕生日が月の始めとなる1日生まれの人は前月に交付され誕生日から使用開始できます。
例:6月1日生まれの方⇒5月中に交付(郵送)され、6月1日から使用できます。
例:6月2日生まれの方=6月中に交付(郵送)され、7月から使用できます。
このような流れになります。
高齢受給者証を紛失したら
高齢受給者証は再発行が可能です。
国民健康保険加入者は、お住まいの役所の国保年金課などに申請。健康保険加入者は、協会けんぽや各自加入の健康保険組合に申請します。
協会けんぽの健康保険高齢受給者証再交付申請書と記入例はこちら↓
お勤め中の方は事業主を通して申請します。
まとめ
高齢受給者証は70歳以上75歳未満の人(後期高齢者医療制度の該当者は除く)に交付される医療費負担割合が明示されている証明書です。
そのため医療機関を受診した際に提示をしないと、2割負担の人であっても3割負担となります。もちろん申請すれば差額は返金されますが、手続きをしなくてはなりませんから面倒です。なので必ず保険証と一緒に保管しておきましょう。
もしも紛失してしまったら再発行ができますので、国民健康保険加入者は住民票のあるところの役所の国民健康保険課。協会けんぽや健康保険組合加入者は、それぞれの申請窓口に申請をしてください。
以上、「満70歳になると交付される高齢受給者証とはどんなもの?」でした。