育児休業給付金についてわかりやすく解説
育児と言えば母親の行うものというイメージがありますが、この頃は男性が育児にかかわる「イクメン」などがマスコミでも取り上げられるようになってきました。最近では国会議員のイクメン扱いについて論争もあり、益々注目されてくるテーマであります。
さて、働いている母親または父親が育児をするともなれば、会社を休むことになります。そこで気になってくるのがお給料です。会社はこの期間の給料の支払い義務はないためほとんどの会社では給料を支給していません。この事情は産休中でも同じです。
国としては少子化対策のため「育児休業給付金」と称して育児をする雇用保険の被保険者には資金面で支援しています。そこで育児休業給付金とはどのような制度なのか、受取ることができる資格のある人はどのような人なのか?いくら受け取ることができるのかなどについて計算方法と手順について解説します。
2017/10/12 11:47:12
育休を取得しなかった理由
育休制度は女性のものだけという認識から、男性についての制度でもあるという認識が広まってきています。
しかしながら男性は育児休業を取得していない人もたくさんいます。では、どのような理由で育休を取得しなかったのか、統計をご覧ください。
以下の回答は、厚生労働省委託調査「平成27年度 仕事と家庭の両立支援に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果」(2015年)から抜粋しています。
男性・正社員が育休を取得しなかった理由
男性・正社員(末子が3歳未満の正社員・職員1,500名)を対象とした調査、(n=1129・複数回答)
- 職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから(26.6%)
- 会社で育児休業制度が整備されていなかったから(26%)
- 残業が多い等、業務が繁忙であったため(21.2%)
- 休業取得による、所得減等の心配があったから(18.5%)
- 保育所等に預けることができたから(11.8%)
- 休業前と同じ仕事や職場に復職することが難しいと思ったから(10.4%)
- 配偶者や子の祖父母等、自分以外に育児を担う人がいたから(10.4%)
- 制度について十分わかっていなかったから(自身が制度の対象になっているかわからなかった場合を含む)(6.7%)
- 休業取得によって、仕事がなくなったり、契約終了(解雇)の心配があったから(6.0%)
- 仕事にやりがいを感じていたから(5.9%)
- 休業から復職する際に、仕事や職場の変化に対応できないと思ったから(4.9%)
子どもの育児がとっくに終わった年齢の多い会社や男性で誰も育休を取得したことがない職場なら、「育児休業制度を取得しづらい雰囲気だった」となることは想像がつきます。そのため若い人で就職活動をされる方は、選択項目としてお給料や福利厚生面だけでなく、「男性の育休」についても調べておく必要があるかと思います。
以上、育休を取得しなかった理由でした。
次の項目から本題の育児休業給付金についてです。
育児休業給付金とは
育児休業給付金を受取ることができる方は、「雇用保険」に加入している一般被保険者や高年齢被保険者の方が1歳に満たない子(一定の要件を満たす場合には最長 1歳6ヶ月。平成29年10月からは最長2歳)を養育した場合が前提となります。
一般の被保険者とは、65歳未満で週に40時間の労働時間がある方、週に20時間以上40時間未満でも1年以上の雇用が見込まれる方をいいます。正規職員、派遣労働者、パートタイマー、アルバイトなどが該当します。
しかしながら、1ヵ月でも雇用保険の一般被保険者であれば受け取れるわけではありません。やはり、加入期間のしばりがあります。
雇用保険の一般被保険者で育児休業開始日より2年間さかのぼり、1カ月に11日以上働いた月が12カ月以上ある必要があります。
このような条件がありますが、「もしも転職したらどのように計算されるのか?」などの疑問がでてきませんか。
たとえば、A社に8カ月勤めていて、その後B社に転職し1年勤めたところで妊娠→出産→産休→育児休業となった場合。
この場合でも、育児休業開始日より2年間さかのぼり、1カ月に11日以上働いた月が12カ月以上あれば通算されますので育児休業給付金を受取ることができます。ただしA社を退職した後に「失業給付」を受取ると通算されませんので注意が必要です。
育児休業給付金はどのくらいの期間受け取れるの?
育児休業を開始してから子供が1歳になるまでの期間で、仕事に復帰するまで育児休業給付金を受取れます。これが原則ですが、保育所等に入所できないなど、一定の要件を満たす場合には最長 1 歳 6 か月まで受取ることができます。平成29年10月から最長2歳になりました。
育児休業期間中に給料を受取ったら?
育児休業期間中に仕事をして会社から給料を受取ったらどうなるのでしょうか?
この場合は次のような条件に該当しなければ育児休業給付金を受取ることができます。
- 各支給単位期間(1ヵ月)に10日以下の就業である。ただし10日を超える場合でも80時間以下である
- 1ヵ月ごとに育児休業開始前の給料の8割以上受取っていない
※ 支給単位期間とは、育児休業開始日から数えた1か月ごとの期間をいいます。
※ 就業日数が10日を超える場合はタイムカード等での確認が必要になります。
育児休業給付金はいくら受け取れるの?
では、育児休業給付金が受け取れる要件に該当した場合に、いったいいくらの金額を受取ることができるのでしょうか?次の計算式により求めます。
育児休業給付金から受取れる金額=休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
ただし、67%は育児休業開始後180日目までとなります。それ以降の金額は50%で計算されます。
育児休業給付金の計算事例
たとえば育児休業前の給料が23万円で出産予定日を2016年1月3日とします。この場合、産後休業終了日は2月28日までですから育児休業開始日は2016年2月29日からになります。そして終了日は2017年1月1日です。
なぜ誕生日よりも2日前になるのかは育児休業給付金は1歳に達する日の前日となっているからです。1歳に達する日とは、「年齢計算ニ関スル法律」により誕生日の前日をいいます。つまりは1歳の誕生日の2日前までになります。
受取れる金額の目安計算
- 開始日から180日目まで23万円×67%=15万4100円
- 181日目以降終了日まで23万円×50%=11万5000円
(15万4100円×6カ月)+(11万5000円×4カ月=)=92万4600円+46万円=138万4600円
以上の結果から、育児休業開始前の給料が23万円→15万4100円となり、大きく減った感がありますが、育児休業開始前の給料が23万円は手取りではありません。ここから所得税や社会保険料等が差し引かれますので約18万円ほどになってしまいます。
ところが、育児休業給付金は所得税や社会保険料、雇用保険料は免除されますから休業前の給料と比べると約8割が支給されることになります。※住民税は納める必要があります。
育児休業給付金がもらえない?
育児休業給付金がもらえない方もいます。次の方は該当しません。
雇用保険に加入していない方
- 自営業
- 自由業
- パートタイマー
- アルバイト
なぜ雇用保険に加入しているのに育児休業給付金がもらえない
以下に該当する方は雇用保険に加入していても育児休業給付金をもらえません。
- 育児休業を取らずに職場復帰をする人
- 育児休業が始まる時点で育児休業終了後に会社を辞める予定の人
- 育児休業をとらずに仕事に復帰する人
- 育児休業期間中に月に10日以上80時間以上働いた人
- 育児休業開始前の給料の8割以上受取っている人
- 雇用保険の一般被保険者でない方
育児休業給付金が1歳6カ月まで受取れる延長とは?
育児休業給付金は1歳に達する日の前日((誕生日の前々日))まで受取れるとなっていますが、1歳6カ月まで延長できる場合があります。次に該当する特別な理由の場合には1歳6カ月まで延長して受取ることができます。延長するには、2週間前までに申し出が必要です。
※平成29年10月から保育園に入れないなどの場合は最長2歳になります。
延長できるための特別な理由とは
特別な理由とは保育所に入所できない場合や、以下のやむを得ない事情で養育が困難となった場合が該当します。
- 配偶者の病気や死亡
- 身体上若しくは精神上の障害
- 配偶者との離婚など
※ 保育所に入所できない場合とは、実際に保育所へ入所申込をしていないと該当しません。
延長とならない事例
延長とならない事例としてハローワークでは次のように説明しています。
- 市区町村に問い合わせをしたところ、途中入所は難しい状況又は定員超過のため次回の入所は困難であると説明を受け、入所申し込みを行わなかった場合。
- 無認可保育所への入所希望申し込みの場合。
- 入所希望日が、1歳の誕生日(※)の翌日以降となっている場合。(市区町村により、毎月1日の入所希望でなければ入所申し込みの受付が出来ないところがあり、例えば、10月29日誕生日の場合、10月1日以前の入所希望でなければ、給付金の延長対象とはならないのでご注意下さい。)
育児休業給付金を受取るための手続き
被保険者本人としては、会社に育児・介護規定がありますのでそれに従い、原則育児休業に入る1ヵ月前までに育児休業申出書等を会社に提出することになります。
会社(事業主)としては育児休業給付金を受取るためにはハローワークに対して受給資格確認手続きを行います。受給資格確認のみを行う場合は、被保険者が育児休業を開始した日の翌日から10日以内に、次の2種類の書類をハローワークに提出します。
- 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回育児休業給付金申請書)
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書と育児休業給付受給資格確認票は電子政府の総合窓口からダウンロードできます。
受給資格確認と初回申請の手続きを同時に行う場合
受給資格確認と初回申請の手続きを同時に行う場合は、上記の書類の他に、賃金台帳、出勤簿など記載内容を確認できる書類と母子健康手帳など育児の事実を証明する書類が必要です。
この場合の提出期限は育児休業開始日から4カ月を経過する日の属する月の末日までとなります。たとえば育児休業開始日が11月3日ならば3月31日までとなります。
提出後、受給資格があると確認された場合は、「育児休業給付金決定通知書と育児休業給付金申請書(次回用)」が交付されますので被保険者本人に渡します。資格がない場合は「育児休業給付資格否認通知書」が交付されます。
なお、手続きについては被保険者本人が行うことができますが、ハローワークでは会社からの手続きを推奨しています。また育児休業給付金は2カ月ごとに振込まれますが、2カ月に1回支給申請をすることになりますので注意が必要です。
育児休業給付金のまとめ
育児休業給付金を受取ることができるには、雇用保険に加入している一般被保険者の方です。ただし、育児休業開始日より2年間さかのぼり、1カ月に11日以上働いた月が12カ月以上ある必要があります。
また、育児休業期間中に就業する場合は以下の要件にも該当していなければなりません。
- 各支給単位期間(1ヵ月)に10日以下の就業である。ただし10日を超える場合でも80時間以下である
- 1ヵ月ごとに育児休業開始前の給料の8割以上受取っていない
育児休業給付金は、育児休業開始日から子が1歳の誕生日の前々日まで受取ることができます。保育所に申し込んでも入所できないなど特別な理由に該当する場合は、最長1歳6カ月までとなります。
受取れる金額の計算式としては、「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」ですが、67%は開始日から180日目までです。それ以降の181日目からは50%になります。
この計算式だけを見ると休業開始前賃金の67%となりますが、育児休業給付金からは所得税や社会保険料、雇用保険料は免除となりますので、実際には休業前の賃金の約80%ほど受取れる計算になります。
以上「育児休業給付金が初めての方の重要項目のまとめ」でした。
さらに育児休業給付金についての詳細は育児休業給付金とパパママ育休のハローワーク申請手続きと計算をご覧ください。
該当カテゴリー:雇用保険(失業保険)
関連カテゴリー:労災保険、健康保険