失業手当を期間の制限なく受取れればいいですが、当然そんなわけにはいきません。やはり期間には定めがあります。この給付期間ですが、会社都合(倒産や解雇)で離職した、セクハラやパワハラ、長時間労働で会社を辞めた、あるいは自己都合で退職(離職)したのかで違っているのはご存知でしょうか。
また会社都合に該当する方は、年齢や雇用保険の被保険者期間によっても違ってきます。詳しくは本文をご覧ください。
2017/10/25 23:21:25
失業手当の給付期間は離職理由がポイント
失業手当の給付期間は、下記のように3つに分けられ、それぞれで異なっています。
- 会社都合
- 自己都合
- 就職困難者(身体障害者、知的障害者、精神障害者、保護観察中の者、社会的事情により就職が著しく阻害されている者等)
それでは、上記理由によりどのくらいの期間受け取れるのか見てみましょう。表をご覧ください。
会社都合で辞めた場合の失業手当の給付期間
倒産や解雇などのような会社側からの働きかけによる離職(退職)です。
これらの理由に該当する場合を特定受給資格者といいます。
区分 |
被保険者期間 |
||||
---|---|---|---|---|---|
- | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
特定受給資格者とは
倒産や解雇などで退職した方を「特定受給資格者」といいます。またそれ以外でも以下のような理由で離職したときも特定受給資格者に該当します。
- 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったとき、又は辞める直前6か月の間のいずれかに3か月あったこと等により辞めた者
- 通常支払われていた賃金と比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため辞めた者 (当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る)
- 連続3か月、各月で45時間の時間外労働をして辞めた者
- 1か月で100時間の時間外労働で辞めた者
- 連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため辞めた者
- 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者(セクハラなどによる理由)
- 公的機関に相談したにもかかわらず、1ヶ月を過ぎても改善措置がとられず離職した場合。
- 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行って いないため離職した者
特定理由離職者とは
下記のような理由で辞めた方は自己都合には該当せず、特定理由離職者となります。
- 体力の不足・心身の障害・疾病・負傷・視力の減退・聴力の減退・触覚の減退により離職した者
- 現在就いている業務または、配置換えによる新たに就く業務が上記の身体的条件により困難、または不可能な場合。提出資料として医師の診断書が必要です。
- 結婚に伴う住所の変更
- 結婚に伴う住所の移転により、事業所への通勤が客観的にみて不可能、または困難になった場合で離職した場合。提出資料として住民票が必要です。
- 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
- 転勤または出向の命令により、配偶者または親族と別居を余儀なくされたために離職した場合
自己都合で会社を辞めた場合の失業手当の給付期間
自己都合の場合の失業手当の給付日数は以下の表の通りです。
区分 |
被保険者期間 |
||||
---|---|---|---|---|---|
ー | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
全年齢 | ー | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
離職理由はどの書類で確認できるの?
雇用保険被保険者離職票-2の右側に離職理由を本人が記入する欄があります。
雇用保険被保険者離職票-2とは、社員が離職すると会社はハローワークに離職証明書(3枚複写)を提出しますが、その一部が雇用保険被保険者離職票-2です。こちらは処理が終わればハローワークから返送されてきますので、会社から雇用保険被保険者離職票-2が交付されます。離職理由欄に本人が記入してからハローワークに提出します。離職票2の見本
離職理由によって失業手当の金額はどのくらい違ってくるのか
「自己都合」で退職した場合には最長でも150日が限度です。
しかし、会社都合により離職(退職)した場合には被保険者期間が20年以上あれば最低でも240日、45歳以上60歳未満の人は330日あります。
このように、退職理由次第で受取れる期間は違ってきますが、金額に換算するとどのくらい違ってくるのか計算してみましょう。
例えば、雇用保険被保険者期間が20年あり、45歳で自己都合理由で退職した場合。
受取れる最高額は7,805円(毎年8月に変わる)×150日=1,170,750円です。
一方、長時間労働が原因で退職して「特定受給資格者」に該当して最長受取った場合。
7,805円(毎年8月に変わる)×330日=2,575,650円になります。
この差は1,404,900円にもなります。
長時間労働やセクハラなどで退職した、通常支払われていた賃金と比べて85%未満に低下したなどの特定受給資格者や特定理由離職者に自分が該当してないかどうか確認してみることが大切です。
就職困難者の場合の失業給付期間
身体障害者、知的障害者、精神障害者、刑法等の規定により保護観察に付された方、社会的事情により就職が著しく阻害されている方が該当します。
区分 |
被保険者期間 |
||||
---|---|---|---|---|---|
ー | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
45歳未満 | 150日 | 300日 |
|||
45歳以上65歳未満 | 150日 | 360日 |
まとめです
失業手当の給付期間は一律ではありません。
退職理由によって違っています。給付期間は、会社都合、自己都合、あるいは就職困難者という3つのケースに分かれます。
中でも、長時間労働やセクハラなどが理由で会社を退職し「特定受給資格者」に該当した場合には会社都合での退職と同じ給付期間になります。
また、結婚に伴う住所の変更で職場への通勤が困難となり退職し場合などは特定理由離職者に該当し、こちらも会社都合での退職と同じ扱いになります。
会社を退職した理由が、特定受給資格者や特定理由離職者に該当する場合には自己都合退職とは受取れる金額が違ってきますので、確認することが大切です。
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