失業保険は、被保険者が、定年、倒産、契約期間の満了等により会社を退職してから失業中の生活を心配しないで新しい仕事を見つけて再就職できるように支給される手当として位置づけられています。
ただし、働いていたときと同じような日額を受取れるわけではありません。また、申請期限も設けられていますのでお気をつけください。
以下詳しく解説しています。
2018/07/27 16:37:27
いくら受取れるのかは失業保険の計算式でわかる
失業保険から受取れる総額は、「基本手当日額×所定給付日数」で計算します。
これだけの説明では、「なんのこっちゃ?」となるので、まずは基本手当日額について説明します。所定給付日数についてはその下で説明しています。
計算に大事な基本手当日額を理解する
1日あたり受取れる失業給付の金額を「基本手当日額」といいます。
この基本手当日額は、どのように算出するのかといいますと賃金日額をもとにしています。
賃金日額とは、原則として離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計を180で割って算出した金額をいいます。日額計算には賞与等(ボーナス)は除きます。
しかし残念ながら、算出した賃金日額そのものが基本手当日額とはなりません。(国もしっかりしていて財布のひもが固いのです)
どんなふうになっているのかと申しますと、所得の高かった人ほどその割合は減らされ50%となります。そして、賃金の低い方ほど高い給付率となり最高80%となります。
おやおや一律ではないんですね・・。
受取る立場からすれば、その分保険料も本人負担も会社負担分も多く支払っていたのに「なんで同率でないんだ!!」なんて愚痴もいいたくもなります。
いずれにしても、誰もが働いていたときのお給料よりも減ってしまうのが実情です。
また、さらにです。基本手当日額には年齢区分があり、これによっても上限が設けられているんです。
「おいおい、保険料の支払いは年齢区分なんかないのに、どうして受取るときには年齢で区切るんだ・・」なんて僕は思ってしまいます。あなたはどう思いますか・・・。
それでは、具体的にはどんなふうになっているのかご紹介します。
失業保険の年齢区分による上限額
平成29年8月1日から平成30年7月31日まで適用される上限額です。(この上限額は毎年8月1日に見直しされます)
年齢区分 | 基本手当日額の上限額 |
30歳未満 | 6,710円 |
30歳以上45歳未満 | 7,455円 |
45歳以上60歳未満 | 8,205円 |
60歳以上65歳未満 | 7,042円 |
あなたはこれをご覧になりどう思われましたか。「どう見たって少ないでしょ」となんて思いませんでしたか。国としては、それだけ早く再就職を見つけろということでしょうが、希望としてはもうちょっと色をつけてもらいたいものです。
失業保険の日額の目安表と大事なポイント
失業保険日額の目安表です。年齢は、離職時の年齢です。また、下記表は平成29年8月1日~平成30年7月31日まで適用の金額です。毎年8月1日に見直しされます。
上の表の見方ですが、たとえば、29歳以下の方が、賃金日額15,000円をもらっていたとします。表ではこの年齢の場合、賃金日額の上限が13,420円となります。ですので、基本手当日額は6,710円が上限となります。
表にある※2と※3に該当する方は表の下に出ている計算式を適用します。
以上が、基本手当日額についてでした。
次は、失業保険から総額受取れる計算に必要な「所定給付日数」についていです。
所定給付日数とは
所定給付日数とは、失業保険が受取れる最大日数のことをいいます。
つまり、失業している限り受取れるものではなく上限日数があるというわけです。
しかし、この所定給付日数=上限日数は、誰しもが同じではありません。
会社を離職(やめた)理由によって違ってきます。
どういうことかといいますと、会社都合で離職したのか、または自己都合で離職したのか、その理由により、それぞれで給付日数が違ってきます。
さらにです。ここでもやはり年齢区分がある(自己都合は年齢区分はなし)のです。
会社都合で辞めた人は、年齢と雇用保険の被保険者として何年加入していたかによって給付日数は違ってきます。
会社都合で辞めた方の給付日数
自己都合で辞めた方の給付日数
自己都合は、年齢は関係なく、被保険者の年数のみで決まります。
失業保険が受給できる条件
失業保険は、被保険者として加入していた人全員が受取れるわけではありません。
条件があるのです。以下の①及び②のいずれにもあてはまることが必要です。
一つ目の条件
以下の3つすべてに該当することです。
- 就職しようとする積極的な意思があること
- ハローワークに来所し求職の申込みを行うこと
- いつでも就職できる能力があるが、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
実際のところハローワークには、失業保険の申請にいくのではなく、求職の申込みの行くのです。ですから、求職活動をしないと失業保険はもらえないようになっています。
二つ目の条件
離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること。
※ 特定受給資格者(会社倒産やリストラなど)又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6ヶ月以上ある場合でも可となっています。
特定受給資格者又は特定理由離職者についてはこちらのページを参照ください。
被保険者期間の計算とは?
雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。
こんな人は失業保険を受取れません・・・失業の状態に該当しない方
次の方は、失業の状態に該当しませんので手当を受給できません。
- 病気やけがのためすぐには就職できない
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できない
- 定年などで退職してしばらく休養しようと思っている
- 結婚などにより家事に専念しすぐに就職することができないときなど
失業保険の申請期間についての説明
失業保険は、受給できる金額(総額)を一括で支払ってくれるものではありません。分割受給になります。
そして、分割受給であっても期限の申請制限が設けられています。この期限を受給期間といいます。
つまり、会社を退職してから何年経過していても手当申請をできるわけではありません。
原則、離職してから1年間に限られています。
離職してから1年を超えてしまうと給付は受けられなくなります。つまりは1年以内に受取り終わる必要があるのですから、1年終了ギリギリでも大丈夫なんて思っていてはいけません。(所定給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日です)
それでは、事例をご覧ください。
申請期間の事例
例えば自己都合で退職した方をイメージしてください。
この方は長年被保険者であったので所定給付日数が150日あります。
そしてこの方が、退職後5ヵ月経過してハローワークに行ったとしましょう。1年経過まで残り7ヵ月です。
所定給付日数150日といえば、5ヵ月間です。ですから、ギリギリ間に合いそうなんて思ってしまいます。
ところがです。失業保険は申請してもすぐに振込みをしてくれるわけではありません。
自己都合退職の方は給付制限期間が3カ月あります。さらに全員に誰でも待機期間も7日ありますから、あわせて最低でも3ヶ月と7日は必要です。さらに求職活動も毎期ごとに2回以上必要です。これが認定されてでないとその期間分は振込されないのです。ですからそれらも足して1年間から逆算しないといけません。
要するにこの方は、大雑把にいって、3ヶ月+7日+150日+失業認定などの関係=約9カ月くらいないといけません。逆算すると、1年-9カ月=3カ月=概ね退職後3カ月経過する前までにはハローワークに行って求職手続きをする必要があります。
※150日まるまる受取れなくても、早期再就職を果たせば再就職手当が受取れる場合があります。再就職手当についてはこちらを参照ください。
失業保険の申請期間(受給期間)の延長が認められてる方もいます
申請期間は、退職後1年間ですが、誰もがそうではありません。
以下に該当する場合には、申請期間(受給期間)の延長が認められています。
認められれば、1年を経過していても失業保険の申請ができますので、該当される方はしっかりと手続きをしておきましょう。
- 病気やけが、妊娠・出産などですぐに働くことができない方
- 60歳以上の定年等により離職し、しばらく休養したい(仕事を探さない)という方
これらに該当される方は失業保険(基本手当)を受けることはできませんが、申請期間(受給期間)を最大3年間(又は1年間)延長することはできます。
詳しくは以下の表をご覧ください。
※給付日数が多くなるわけではありません。
延長理由 |
病気やケガ、妊娠・出産など |
60歳以上の定年等による離職 |
---|---|---|
提出期限 | 離職日の翌日から30日を過ぎてから1カ月以内 | 離職日の翌日から2カ月以内 |
延長期間 | 最長3年間 | 最長1年間 |
提出書類 | 受給期間延長申請書、離職票-1、離職票-2、本人の印鑑(認印)、必要に応じ各種証明書 | |
提出先; | 住所地を管轄するハローワーク |
延長の手続きについては以下の記事をご覧ください。
失業手当延長と申請手続きについて詳しく解説
まとめ
失業保険から総額受給できる計算式は、所定給付日数×基本手当日額になります。
所定給付日数は、離職理由が会社都合なのか、自己都合なのか、就職困難者なのかによって違ってきます。
基本手当日額とは離職時の年齢や離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金を180で割った金額が賃金日額になります。その賃金日額からさらに計算式にあてはめて「基本手当日額」を算出します。
賃金日額が高かった人ほど給付率は50%となってしまいます。賃金日額が低い人でも働いていた時の80%なので、20%は減ってしまいます。
また、失業保険を受給するためには申請が必要ですが、期限があります。この期限のことを受給期間といいます。
ただし注意しなくてはいけない点があります。
原則、離職してから1年間に限られています。1年以内に失業保険を受取り終わる必要があります。
失業保険を受給するには、求職活動実績が必要になります。このことについては失業保険の求職活動実績って何回必要でスケジュールはどうなっているの?をご覧ください。
以上、「失業保険の給付日数と金額はどうなっているの?そして申請期間はあるの?」でした。
該当カテゴリー:雇用保険(失業保険)
関連カテゴリー:労災保険、健康保険