あーっ。もうすぐ定年。退職したら雇用保険から受け取れる給付金はあるのかな?
なんて、考える方も多いと思います。
雇用保険での手当としては、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金があります。
両方受取るわけにはいきませんが、ここではどのようにそれらを区別するのか、またそれぞれの受けとれるための資格要件、受給できる金額、手続き方法や手順について解説します。
このページの前半は高年齢雇用継続基本給付金。後半部分が高年齢再就職給付金の説明です。
60歳関連ページ:60歳代に突入して生命保険のことが気になる方へ
2017/11/20 11:59:20
高年齢雇用継続給付は2種類あります
雇用保険継続給付は、高年齢とあるように60歳以上65歳未満の方を対象にした給付金となっています。
目的は、65歳までの雇用継続を援助・促進することですが2種類あります。
ひとつは、高年齢雇用継続基本給付金、もうひとつは高年齢再就職給付金です。
たとえば、60歳で一度は退職するとしても、引き続き再雇用として同じ職場で働く場合などは、失業状態にはなりません。ですから失業手当を受給することがありません。
でも、なかには60歳時点に比べて賃金が75%未満になってしまう方も当然います。こういう方には高年齢雇用継続基本給付が対象となり支給されることになります。
そして、高年齢再就職給付金とは、会社を退職して失業状態となり、他の会社に就職意欲がある場合でその他要件を満たしていれば、失業手当を受給することができます。
この失業手当を受給して60歳以降に再就職した方等は、「高年齢再就職給付金」の受給資格者となります。ただし、高年齢雇用継続基本給付金と同じように、賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下した場合や失業手当の残日数が100日以上ある方等に限定されています。詳しくは下記をご覧ください。
次は、高年齢雇用継続基本給付の受給資格についてです。
高年齢雇用継続基本給付の受給資格
高年齢雇用継続給付に該当する方というのは以下の要件をすべて満たした方になります。
まず、①60歳以上65歳未満で、雇用保険一般被保険者の方
雇用保険の被保険者には一般被保険者、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者という4つの形態があって、そのうち一般被保険者とは、正社員、非正規社員、派遣労働者、アルバイト、パートが該当します。
次に、②雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある方
そして最後は、③賃金が60歳時点と比較して、60歳以降の賃金が75%未満の方
上記質問の3つすべて「はい」に該当すれば高年齢雇用継続給付を受取ることができます。
高年齢雇用継続給付金の受給資格の判定
高年齢雇用継続基本給付の受給ができるかどうかの3つの事例を掲げていますのでご覧ください。
事例1
60歳前に雇用保険の被保険者期間が5年以上あり、その後も働いて賃金が75%未満(60歳時点の賃金)に低下した場合の例です。この場合は65歳まで高年齢雇用継続基本給付を受取ることができます。
事例2
60歳時点では被保険者期間が3年しかありませんでしたが、その後も雇用保険に加入して62歳時点で賃金が75%未満に低下した例です。この場合も65歳までの3年間は高年齢雇用継続基本給付を受取ることができます。
事例3
雇用保険の被保険者が5年以上ある方が、60歳前に離職をし失業手当を受給することなく1年以内に就職し、賃金が前職の75%未満になった場合には、65歳まで高年齢雇用継続基本給付を受取ることができます。
高年齢雇用継続給付の受給期間と給付額の計算
まず、受給期間については被保険者が60歳に到達した月から65歳に達した月までとなっています。そして受給金額は一律ではありません。
やはり計算式があって、高年齢雇用継続基本給付の支給額は、60歳に到達する前の6ヶ月の給料の低下率に応じて給付金額は違っています。原則的には低下率計算式は以下の計算式になります。
- 賃金月額とは、60歳に到達する前の6ヶ月の平均給料。
- 60歳以降に受給資格となった場合は、その日前6ヶ月の平均給料となります。
※算定のための60歳時到達時賃金上限額は、469,500円になります。また下限は74,100円です。
※平成30年7月31日までの金額です。
上記1や2の給料を100として現在の給料が以下の場合に支給されます。
また、支給対象月給料と給付金合計額が、支給限度額357,864円※を超えるときは、超える部分の額が減額されます。
1、75%以上の時・・・支給なし
2、61%以上75%未満の時・・・現在の給料の15%~0%を支給>
次の計算式を用います。
3、61%未満の時・・・現在の給料の15%が支給されます。
※ ただし支給対象月に支払われた給料が357,864円※以上の時には支給されません。
※ 算定された支給額が、1,976円※以下の場合も支給されません。
※の金額は平成30年7月31日までの金額です。毎年8月1日に改定されます。
下の早見表を利用すれば、賃金の低下率によって高年齢雇用継続基本給付金がいくらくらい支給されるのか計算できます。ただし、表に該当しない場合には計算式を用います。
低下率(%) |
支給率(%) |
低下率(%) |
支給率(%) |
---|---|---|---|
75%以上 |
0 |
68 |
6.73 |
74.5 |
0.44 |
67.5 |
7.26 |
74 |
0.88 |
67 |
7.8 |
73.5 |
1.33 |
66.5 |
8.35 |
73 |
1.79 |
66 |
8.91 |
72.5 |
2.25 |
65.5 |
9.48 |
72 |
2.72 |
65 |
10.05 |
71.5 |
3.2 |
64.5 |
10.64 |
71 |
3.68 |
64 |
11.23 |
70.5 |
4.17 |
63.5 |
11.84 |
70 |
4.67 |
63 |
12.45 |
69.5 |
5.17 |
62.5 |
13.07 |
69 |
5.68 |
62 |
13.7 |
68.5 |
6.2 |
61.5 |
14.35 |
- |
- |
61%以下 |
15% |
高年齢雇用継続給付の支給額の計算について
ここで、事例を用いて計算してみます。
雇用保険の被保険者期間が5年あり、60歳到達前の6ヶ月の平均給料が30万円であった場合。
給料が18万円になった場合
低下率は、60%となりますので、18万円×15%=27,000円の高年齢雇用継続基本給付金が支給されます。
給料が20万円になった場合
低下率は、66.67%となり、上記の早見表には当てはまりませんので、以下の計算式になります。
給料が25万円になった場合
低下率は、83.3%となり、75%以上のため高年齢雇用継続基本給付金は支給されません。
高年齢雇用継続基本給付金の手続きについて
高年齢雇用継続基本給付の手続きは事業所の管轄のハローワークにて行いますが、電子申請も可能です。またハローワークでは手続きについては被保険者からではなく、なるべく事業主が行っていただくよう求めています。
高年齢雇用継続給付の手続きに必要な書類
高年齢雇用継続基本給付金の受給資格確認手続きと初回の支給申請も同時に行う場合に必要な書類
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
- 雇用保険被保険者六十歳到達時賃金月額証明書
- 被保険者の年齢が確認出来る書類(運転免許証の写し、住民票記載事項証明書の写し(コピーも可)等
- 賃金月額証明書の記載内容が確認出来る書類(賃金台帳、出勤簿等)
- 払渡希望金融機関指定届
- ※ 「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」にあるものを使用してください。
- 原則として2か月に一度、支給申請書を提出する必要があります。ただし2回目以降は受給資格確認手続きのための賃金台帳や出勤簿、被保険者の年齢確認書類は必要ありません。
提出時期
初回は支給を受けたい月の初日から起算して4ヶ月以内となっています。2回目以降の場合は、前回の支給決定通知書に記載された支給申請期間(1ヶ月)となっています。
高年齢雇用継続給付の申請書類(ハローワーク)はこちらから入手できます。
電子申請はこちら
高年齢雇用継続給付の税金はどうなるの?
雇用保険から支給される給付には、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の4つがあります。これらは、いずれも非課税とされています。
よって、高年齢雇用継続給付は雇用継続給付のひとつですので、こちらも非課税となります。
以上が高年齢雇用継続基本給付についての説明です。
次に高年齢再就職給付金について説明します。
高年齢再就職給付金の受給要件について
高年齢再就職給付金について最初の項目で軽くふれましたが、ここから詳しく説明します。
まず、どのような方が該当するかですが、以下の項目すべてを満たした方になります。
- 失業手当を受給した後に60歳以降に再就職した方。
- 再就職後の賃金が失業手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満となった方
- さらに以下の3つの要件を満たした方が対象となります。
- 基本手当の算定期間が5年以上あること
- 再就職した日の前日に失業手当(基本手当)の支給残日数が100日以上あること
- 安定した職業につき雇用保険の被保険者となったこと
なお、再就職手当を受けた場合には、高年齢再就職給付金は支給されません。
次に、高年齢再就職給付金の支給要件についての事例です。
高年齢再就職給付金の支給事例
高年齢再就職給付金の事例として3パターン取りあげています。
支給事例1
60歳時点では被保険者期間が5年なかったが、その後も継続して雇用保険に加入し、5年過ぎた時点で退職。その後失業手当を受給しだしたが、100日以上の失業手当日数を残して再就職。しかし、再就職先の賃金が75%未満に低下してしまった例。この場合は、高年齢再就職給付金を1年間受給できます。
支給事例2
被保険者期間が5年以上ある方が60歳前に退職。その後失業手当を受給し始めたが100日以上を残して再就職。しかし、再就職の賃金が75%未満に低下してしまったという例。この場合も高年齢再就職給付金を1年間受給できます。
支給事例3
雇用保険の被保険者期間が5年以上ある方が59歳を過ぎたところで退職。その後失業手当を受給したが100日以上を残して60歳前に再就職。しかし再就職先の賃金が75%未満に低下してしまったという例。この場合は60歳前に就職しているので高年齢再就職給付金は支給されません。
高年齢再就職給付金の支給額について
高年齢再就職給付金は、支給対象月に支払われた賃金の最高15%(上限あり)が2ヶ月ごとに支払われます。上記の高年齢雇用継続給付と同じ計算をします。
基本手当の支給残日数が200日以上の場合は最大で2年間、100日以上の場合は最大1年間支払われます。ただし、被保険者が65歳に達した場合は、上記期間にかかわらず、65歳に達した月までとなります。
高年齢再就職給付金を受取る時の注意点
再就職手当と高年齢再就職給付金の併給はできません。
どちらかの選択となり、一方の給付金が支払われた場合にもう一方の給付金については受け取る資格はなくなってしまいますので慎重に選択する必要があります。
高年齢再就職給付金の必要書類と手続き
手続きについては、受給資格確認手続きと支給申請時手続きがあります。
受給資格確認手続きについては事業主が行うこととなっています。
高年齢再就職給付金・受給資格確認のための提出書類
- 「高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」
- 払渡希望金融機関指定届
- 雇用保険受給資格者証
提出時期
雇用した日以後速やかに提出する必要があります。
支給申請時に提出する書類
受給資格確認手続きのときの書類とは違い、以下の書類をハローワークに提出します。
手続きは事業主または被保険者から行えますが、ハローワークではなるべくなら事業主からの提出を求めています。
支給申請の提出書類
- 高年齢雇用継続給付支給申請書
- 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿などのいずれか
- 被保険者の年齢が確認できる書類等(運転免許証か住民票の写し(コピーも可)
提出時期
受給資格確認通知書または支給決定通知書に記載された支給申請期間
高年齢雇用継続給付のまとめ
高年齢雇用継続給付には2つの手当があります。ひとつは高年齢雇用継続基本給付で、引き続き雇用され60歳時点に比べて賃金が75%未満になってしまった方に支給される手当て。
給付額については60歳に到達する前の6ヶ月の給料の低下率に応じて違ってきます。
そして、もうひとつは高年齢再就職給付金です。
こちらは一度退職して失業手当を受給し、給付期間を100日以上残して60才以降に再就職をし賃金が75%未満になった方に支給される手当てです。
給付額については、支給対象月に支払われた賃金の最高15%(上限あり)が2ヶ月ごとに支払われ上記の高年齢雇用継続給付と同じ計算をするということです。
以上、必ず押さえておきたい高年齢雇用継続給付の計算と手続きについての記事でした。
該当カテゴリー:雇用保険(失業保険)
関連カテゴリー:労災保険、健康保険